Paul Bonacquisti: 2010 Sabbia "Tree Trunk Poker"

ポール・ボナキスティ、2010年製サッビア ツリー・トランク・ポーカー。

ボナキスティの得意シェイプとしてはブルドッグのバリエーションがよく知られているが、この独特の木の幹(ツリー・トランク)を模したポーカーも彼のシグネイチャ・シェイプの一つである。アクセントのついたファットなシャンクとエレガントなカーブを描くテーパード・ステム、そして中央部が窄まったシリンドリカル・ボウルはコンポジションこそ古典的なポーカー/チェリーウッドでありながら、他の何物にも似ていないボナキスティ独自のセンスをよく表現している。アルティザン・パイプメーカーの創出したポーカー系シェイプの中でも最も力強く、最も美しいシェイプの一つに数えられるだろう。

サンドブラスト・テクスチャは起伏が激しく、シェイプの統一性を失わないギリギリのレベルでランダムさを備えており、これは近年トレンドとなっているディティールが細かくリンググレインを重視した繊細なサンドブラストとは一線を画すボナキスティのブラストの特徴となっている。自然なウェーブを描くプラトー・トップがさらに意外性を強調しつつ、シェイプと一体となっているのは見事。ステインは漆黒に近いダークなチョコレート・パープルでウルトラシックなアピアランスを付与している。

ツリー・トランク・ポーカーにはサドルビット・バージョンや、フラットトップなどのバリエーションが存在するが、このプラトートップ、オールブラック・サンドブラストのコンフィギュレーションが最もこのシェイプのエレガントさ、力強さを強調している、と思うのはオーナーならではの贔屓目だろうか。カスタムオーダーの一本で受け取りまでほぼ一年かかった。