Barling's Pipelet #31 Lambert Norwich Billiard/Liverpool(c.1935)

pic01

description:

現在のビンテージBarlingコレクションシーンでは、<スクリプトロゴはPost-Transitionの証であり、唯一の例外はGuinea Grainだけ>というのが定説になっている。このパイプの存在は、そんな定説を覆す衝撃的なスクープである。

事の起こりはThe Piperackに入荷していた1本のBarlingだった。ショップ側の記述では「スクリプト・ロゴの1970年代のデンマーク製Post-Transition Barling。このライン名に心当たりはない。小振りなビリヤードでステムはアルミ製スクリューインタイプ」とのことで、価格もPre-Trans物の1/4といったものだった。

YOW boxしかし1935年、ロンドンで発行された小売り店向けプライスリストのBarlingの項目には、はっきりと"Barling Pipelets…Alminium Push 7/6(シリング)"との記述があり、Pipelet(パイプ+「小さい」を表す接尾辞)というネーミング、アルミニウム・プッシュという状況証拠から、Pre-Trans Barlingの1ラインではないかと思えたため(価格も安価だったこともあり)購入に踏み切ったのである。なにより、写真のその姿が、いかにも戦前のパイプ然とした、重厚な雰囲気で、とてもPost-Transition期のパイプとは思えなかったという理由が大きかった。

さて、写真を見ていただければお分かりになると思う。ハンドターニングされた重厚なシェイプ、オールドストック・アルジェリアンブライヤー、クラシックなプラムカラー、最上級のハンドカット・バルカナイトマウスピース、そしてセミ・オリフィック期から抜け出したばかりといった風のリップの造型。紛うことなきPre-Trans Barlingそのものである。そしてパイプの主観的な印象に留まらず、このパイプが卸された英国ノーウィッチのタバコニスト、Lambertは1947年に閉店しているという記述も加えて見つかったのである。

結論として、<Pre-Transition期のBarlingにはGuinea-Grain以外にも、スクリプトロゴを使用したラインは存在する>ということになると思う(とはいえPipeletは特別なラインであり、通常のPre-Trans期Barling's Make、Barling's Make Ye Olde Wood等が従来から言われている「アーチ状BARLING'Sの下にMAKE」のスタンプであるという事実には変わらない)。このPipeletははおそらくショートスモーキング用の小型パイプのラインで、戦前の短い期間生産されたのだろう。

pic02 pic03 pic04

 

pic05 pic09

Barling Piplet #31 shape execution :↑

ロングシャンク・ビリヤードとリバプールの折衷的シェイプ。ボウルがやや丸みが強いところに、いかにも古い戦前パイプの味がある。この31というシェイプナンバーが、後年のいわゆるNicholsシェイプナンバーに含まれるものであるのかは不明である。もしかするとショートスモーク/レディースパイプ専用のシェイプナンバーかもしれない。

pic06 pic07 pic08

 

pic10 pic11 pic12

Briar texture of Barling Piplet:↑

深く美しいプラムカラーに、縮緬皺のように縮れた、アルジェリアン特有のグレインパターン。僅かなアウトラウンドと数個の打ち傷を除けば、この時代のパイプとしては非常に状態が良いといえる。

 

pic15 pic13 pic14

Engineering of Barling Piplet:↑

おそらく世界初?紹介のBarling Pipletのディティール。1935年プライスリストの記述と全く同じように、ネジ山の切られたアルミニウム製のプッシュがシャンクにインサートされており、そこにバルカナイト・ステムをマウントする方式となっている。いかにもPre-Trans期のパイプらしく、この辺りの精度も非常に高い。Pipeletは小型パイプのラインであるため、破損が想定されるジャンクション部分の強度確保のための仕掛けであると思われる。

(上)非常に精度の高いハンドカット・バルカナイト・ビット。リップ部はオリフィック時代の造型を引きずっているが、リップ幅ぎりぎりまでに空けられた巨大なスリットといい、極薄のバイトといい、また中を通る極太の煙道・深いV字ファンネルといい、エアフロー、バイト感覚の双方に細心の意識が払われている。

 

pic16

Barling Pipelet additional stamping:↑

今回問題となったスクリプト(筆記体)のBarlingロゴ。Post-Trans期のものとは異なり、gの足がロゴ下部に流れず、ループになっている。Barling CrossもPre-Transの古いパイプによく見られる、字体の細い繊細なもの。

タバコニスト刻印のLAMBERT NORWICHとは、1762年から続き1947年まで続いた英国ノーウィッチのタバコニスト兼紅茶販売業のF. Lambert and Sonsを指す。

 

 

 

shape: N/A billiard/Liverpool
stem: screw in handcut vulcanite
junction: alminium push
color: natural
ornament:none
length: 129mm
height: 39mm
chamber dia: 17mm
chamber depth: 34mm
weight: 22g

nomenclature:
31
BARLING(script, without 'S)
PIPELET

LAMBERT
NORWICH

Barling Cross logo hotstamped on the stem

note:
・トップやや磨耗
・アウトラウンド少々
・ハンドリングマーク少々
・Barling Cross 40%残存