Comoy's Grand Slam PAT.PENDING #235 Kruger (1933-1946)

pic01

description:

Grand Slamは1933年に導入されたシステムパイプのシリーズである。Comoy'sは当時はステムロゴを持たなかったが、Grand SlamにComoy's史上初めて使用されたロゴが白+ターコイズブルー+白のエボナイトを象嵌した有名なBar-logoである。Bar-logoGrand Slamにのみ使用され、(のちにComoy'sの正式なステムロゴとなる)1930年代中期に導入されたinlaid-C logoと混在しながら1950年代初期まで使用された。

このサンプルは非常にレアなGrand Slamである。第一に、前記Bar-logoを持つ点。第二に、Grand Slam標準のオフセット・エアウェイを持つU.K.Pat. 405743(1934年認可)のアルミニウム・フィットメントではなく、よりクラシックなU.K.Pat. 269082(1927年認可)の"フランケンシュタイン・フィルター※1"を持つ点。第三にシャンク裏面にPAT.PENDINGの刻印を持つ点。第四にシャンク補強の金属リングが埋め込まれている点。そして第五に、機構上の問題からGrand Slamには珍しいベント、それもフルベントのOom Paulシェイプ(Comoy'sではOom PaulをKrugerと呼称)であること、そして最後にこのシェイプ#235は後年Extraordinaireディジグネーションを与えられるオーバーサイズ・シェイプであることである。

アルミチューブは前オーナーによって根元を残して切断されていたが、残った部分に82の刻印が確認でき、その形状もU.K.Pat. 269082のアルミチューブと全く同一であることから、これはU.K.Pat. 269082であると想像できる。PAT.PENDINGの刻印はおそらくアメリカに於いてU.K.Pat. 269082を申請中である由を示すと推測できる。このパイプが作られた時点で成立していたはずのU.K.Pat. 269082は1926年出願、当時のイギリスの特許は出願日から20年間有効であるから、このパイプの製作年代はGrand Slamが発売された1933年から、特許が期限切れになる1946年の間にあることは確定であるが、おそらく製作されたGrand Slamのなかでも最も初期の製品なのではないかと思う。レア中のレアなディティールを数多く備えた、非常にサンプルとしての価値の高い1本。

pic02 pic03 pic04
pic05

Comoy #235 shape execution :↑

オーバーサイズKrugerの#235。後年はExtraordinaireディジグネーションを与えられるシェイプ※2。まさに典型的なクラシック・Oom Paulで、Comoy'sの優美なシェイプエクスキュージョンもあって、まさにプラトニックなOom Paulのリファレンス・シェイプと言える。オーバーサイズのため迫力も十分。ステムのテーパー加減、ベント角度、リップの形状、これだけ大きなパイプなのにエレガントさを備えるのは見事としか言いようがない。

pic06 pic07 pic08

 

pic09 pic10

Briar texture of Comoy's Bar-logo Grand Slam:↑

年代を反映して、そこここにハンドリングマークやスクラッチが存在するが、それを考慮にいれても非常に密度の高い、美しいクロスグレン。ステインはダークレッドコントラスト。

 

pic12 pic11

Junction of Tradition:↑

(上)後年のComoy'sの"Slender Bite Mouthpiece"が導入される以前の、ややビットの厚みがあり、フレアされず両端を切り落とされたスタイルのリップのアップ。(下)シャンク補強がなされたジャンクションのアップ。このメタルインレイのため煙道の角度がとれなかったのか、かなりボウルの底から高い位置に煙道が空いている。パイプクリーナーテストはパスしない。

 

 

 

shape#235 Oversize Kruger
stem: handcut vulcanite
junction: metal liner enforcement
color: darkred contrast
ornament:none
length:125mm
height: 75mm
chamber dia: 21mm
chamber depth: 55mm
weight: 50g

nomenclature:
COMOYS (in upper case, san serif, without apostroph)
GRAND SLAM
MADE IN ENGLAND(circular stamp)
235
PAT. PENDING(in upper case, san serif, slanted)
3-piece white+turqoise+white inlaid Bar-logo on the stem

note:
・ボウルトップに比較的大きなノックマーク
・ボウルに軽微なスクラッチ多数
・その他、ハンドリングマーク多数
・アルミフィットメント切断

※1 Fine Pipe InternationalのSamuel Goldberger氏による命名。"...which reminds me of a piece of apparatus in Dr. Frankenstein's laboratory, with long tube and a gap suspended between two supporting arms."

※2 このシェイプ#235は2004年以降のSteve JonesによるComoy'sのテコ入れで、やはりExtraordinaire2用のシェイプとして復刻されているので、現在でも比較的容易に手に入れることができる。