ソルト+アルコールメソッド

※追記 2021年2月

ソルトアルコールメソッドは、あくまで中古パイプの嫌な臭いを除去するための方法です。自分で新品から下ろしたパイプにはあまり効果が期待できないばかりか、アルコールの漏れなどでせっかくのパイプの美しいフィニッシュを損壊する可能性もありますので、新品から使用しているパイプには積極的に行うのは避けたほうがよいでしょう。

新品から下ろして一から使っているパイプに関しては、ボウルの汚れよりも煙道内の汚れのほうが喫味によほど悪影響があるので、喫煙によってパイプの味が落ちたと感じるときは、アルコールで湿した太目のモールクリーナーで徹底的に煙道内部を清掃するようにしてください。煙道内をクリーンに保つことはパイプ喫煙の喫味において非常に重要です。

概要

ebayなどでestateパイプを購入すると、まず突き当たるのがパイプの状態の問題です。レストア済みでパイプを出品する良心的なsellerもたくさんいますが、なにがしかのレストアを購入者が施さなければならないケースがほとんどと言っても過言ではないでしょう。特にボウル内部に残留したカーボンケーキや煙道内のタール、そしてとりわけパイプ内に残留する匂いは、自分の吸っている銘柄とタイプの違うものである場合は尚のこと、運良く自分の好きなタイプのタバコの香りであったとしても、経年変化などで放置できないものに変わっていることは珍しくありません。これらの除去もしくは軽減は、estateパイプを扱う方なら必須のテクニックとなると思います。

ソルト+アルコールメソッドは、日本ではよく「ソルトキュアリング」と呼ばれる手法です。(別段キュア=乾燥をしているわけではないので海外でこのサイトでは一般的な呼称で呼びます。)アルコールの力を借りて、ボウル内に残留したカーボンケーキからタール分を溶解して除去し、リーミングしやすい硬度に変化させます(タール分を除去されたカーボンはそのまま残すことが可能)煙道内のタールや老廃物も同様に除去し、それに伴う匂い/臭いを除去することが可能です。自分の体験ではこれまでに十数本のパイプにこの方法を施して来ましたが、一目見て「これはひどい」と思えるような状態のパイプでも、なんら不具合を感じることがない程度までボウル・煙道内の状態を回復することができます。尚、万が一このガイドの記述に従うことによってお手持ちのパイプに不具合などが生じたとしても、筆者は責任を負うことはできませんので予めご了承ください。

準備するもの

・薬局で売っている消毒用アルコール(500ml入り程度のものがお得です。意外にアルコールは消費するのでこのくらいの大きさでも困りません)
・モールクリーナー(太めのもの)
・パイプレスト、もしくは何らかのパイプスタンド
・食塩。ごく普通のテーブルソルトでOK。
・ティッシュペーパー

(注意! 使用可能なのは薬局で売っている無水アルコール、消毒用アルコール、消毒用アルコールIP、もしくはアルコール濃度の高いスピリタス、ウォトカ等です。燃料用アルコールや他の溶剤(ベンジン、アセトンなど)は絶対に使用しないでください。身体に有害です。)

1.清掃

処置を施すパイプを軽く掃除します。喫煙後すぐなら数時間〜1日ほどパイプを冷ました後、ステムを抜いてアルコールに浸したモールクリーナーで掃除をします。この際中からドロドロになったタールが出てくるような状態でしたら、アルコールの量を増やします。ざっと煙道内壁の木肌が見えてくる程度まで綺麗にしたら終了です。

2.塩を詰める

新聞紙などの上でボウルに食塩を詰めていきます。煙道に塩を詰めないやり方もありますが、自分のやり方では煙道にも塩をきっちり詰めます。ボウルから煙道に塩が入っていかない場合には、シャンク側からも詰めてください。この後でボウルをやや傾けて放置するので、ボウル内はインナーリム下端かややそれ以下程度まで塩を詰め、内部に空洞がないかチェックして終了です。

3.アルコールを満たす

適当なパイプスタンドなどを使い、ボウルトップとシャンクの開口部が同じ高さになる程度までパイプを傾けて固定します。メソッド中にパイプが倒れると大変なことになるので倒れないようしっかり据えてください。それができたら、モールクリーナーなどを伝わせてボウルの上に静かにアルコールを垂らしていきます。ボウルトップの塩がひたひたになったらOKです。シャンク側からのアルコールの漏れに注意してください。なお、このときにボウル表面などにアルコールをこぼしてしまった場合、慌てて拭くとワックスの皮膜を傷つけることがあります。その場合は落ちついて後でアルコールが乾いてから柔らかい布などでワックス面を磨きなおしてください。

4.寝かす

このまま一晩ほど放置します。冬の間などは温かい部屋に入れておいたほうが蒸発が早くなっていいと思います。

5.塩を除去する

一晩あけると、ボウル内のアルコールは完全に蒸発し、塩の表面には黒〜茶色のタール分が浮き上がっていると思います。塩を捨てて内部を清掃します。煙道内に塩が固着している場合は楊枝などで崩しながらモールを通せば除去することが可能です。煙道内から塩が除去できたら、二つ折にしたモールクリーナーなどでさらに清掃してください。モールに汚れが見られなくなったら終了です。尚、この段階でボウル内に存在していたカーボンケーキは粘性がとれ、簡単にリーミングできるようになります。カーボンを除去したい場合はここでリームし、ボウル壁をアルコールを染みこませたティッシュなどで清拭してください。カーボンを残す場合はそのままで結構です。

6.乾燥

この状態で30分も置けば、大体のアルコール分は蒸発します。ここでシャンクから空吸いしてみて、まだ匂いが気になる場合は再び1からの工程をやりなおしてください。匂いが除去できている場合はさらに置いて乾燥させます。大体半日ほど置けばステムを装着することができるようになります。(乾燥しきるまではステムは付けないようにしてください。ステムルーズが起こる可能性があります。)

7.試喫

完全に乾燥したら、タバコを詰めて吸ってみてください。この方法で落ちない頑固な香りには、さらなる技が存在しますが、ソルト+アルコールメソッドを数回繰り返すことでほとんどの問題を除去することができると思います。