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オールドイングリッシュパイプと付き合う上で必須となるのが、中古パイプのレストアのテクニックです。とはいっても、別段本格的なものではなく、パイプを快適な喫煙が可能な状態にまで持って行き、少々外見も見栄え良くする程度の、誰にでもできるレベルのレストアです。たったこれだけの手間と時間をかけるだけでも、古いパイプは実に容易にその本来の魅力を取り戻します。今回の対象となったパイプはおそらく50年代に作られた、Sasieni製Old England Rustic 88S Saddlebit Author。
・消毒用エタノール(スピリタスで可)
・不要となった歯ブラシ
・ティッシュペーパー
・(乾いたものなら使用済みで構わない)パイプクリーナー多数
・パイプレスト、パイプをしっかり保持できるもの
・塩(ごく普通のテーブルソルト)
・耐水ペーパー、400番、600番、1000番、2000番。
・プラスチック用コンパウンド
・布切れ(不要となったTシャツなどの端切れ)
・パイプポリッシングクロス
・パイプボウル用ワックス、常温で塗布できるもの。
日常的にパイプの手入れをなさっている方なら、殆どがお手元にあるものばかりだと思います。
箱を開けたばかり。オシャー!ピカピカにしてやるぜ!
とりあえずパイプをひっくり返して、状態を確認します。中古で売られてきたパイプというのは、どこか表情に寂しげなものがありますね。だが安心したまえもう大丈夫だ!
ステムは強度に変色しています。
ボウル内は一応リーミングされてはいますが、前オーナーの吸っていた煙草の饐えた匂いが残留しています。
Old Englandの盾形のホットスタンプ・ステムロゴはかろうじて残っている状態。
ボウル表面のアップ。ラスティックの模様の間にホコリがこびりついていました。
ボウルトップの状態。少々アウトラウンドされています。トップには硬化したタールの堆積が。
消毒用エタノールを使って、ボウル表面の汚れを落としていきます。。
要らなくなった歯ブラシを使い、アルコールをブラシにまぶしながらボウルを擦ります。
ラスティックの模様の間に入ったホコリを落とすように。染料が少し落ちますが、ラスティックフィニッシュの場合問題はないので無視。
模様の中に入ったホコリも完全に落とすことができました。
ステムを外して、シャンク内部の状態を確認します。一応クリーニングが済んでいるとはいえ、まだタールが奥のほうに相当量が固着しています。
煙道内部のタールを柔らかくして落としやすくするために、とりあえず軽くソルト+アルコールメソッドをかましておきます。まず塩をチャンバーと煙道に詰めてパイプレストに固定した後…
ボウルのほうからエタノールを注いでいきます。
ボウル内の塩がひたひたになったらOK。
このまましばらく放置します。どちらにせよ後で本格的にアルコールメソッドを掛けなければならないので、2-3時間といったところでしょうか。
2-3時間したら、ボウル・煙道内部の塩を捨て、アルコールが乾かないうちにシャンク内部の清掃を行います。使用済みのパイプクリーナーを半分に折ったものを数本まとめてシャンク内を強くこすります。
ごっそりと柔らかくなったタールが落ちてきます。パイプクリーナーの束を数回交換しながら、タールが付着しなくなるまで綺麗にしていきます。煙道内部も、二つ折りにしたパイプクリーナーを通して色が付かなくなるまで清掃します。乾きが早いようなら適宜エタノールをパイプクリーナーに付けます。
塩を完全に落とすと、綺麗になったボウル内壁が現れました。Sasieniのオーブンキュアリング独特の黒ずんだ色をしています。カーボンがまだ残っているようでしたらここでリーミングをしておきます。リーミング後はアルコールをしみこませたティッシュでボウル内をざっとぬぐっておくといいでしょう。
ボウル表面にワックス分を補給してやります。ここではdenicareのボウルクリーナー(カルナバワックス入り)を使用しています。
ラスティックの模様の中にワックスが入るほど大量にこすり付けた後、余分なワックスをティッシュで除去しながら磨いていきます。
余分なワックスを落とせたら、セーム皮などのポリッシングクロスでさらに磨きます。
汚れが落ち光沢も出て、見違えるように綺麗になりました。これでボウル側は大体完了です。若干ボウルトップに固着したタールが残っていますが、これは使用しながら落としていくことにします。
今度はステムに取り掛かります。
用意するサンドペーパーは400番、600番、1000番、2000番。
ステムの変色がひどい場所を、400番で削り落としていきます。ステムの元のシェイプを変えたり、エッジを削り落としたりしないように注意!サイド、サドルビットのエッジ、ボタン、ステム接合部などのエッジ部分には十分注意してください。
ロゴなどがある場合、粗いサンドペーパーが触れないようにします。
400番を掛け終わった状態。
ペーパーの番手を上げて、さらに変色部分を落としていきます。サンディングマークが残らないよう、時折布などで削り粉を拭って確認しながら作業していきます。
2000番まで掛け終わったら、仕上げにとりかかります。用意したのはサンライトのプラスチック用コンパウンドと古くなったTシャツの端切れ。
布にたっぷりとコンパウンドを付け…
辛抱強く磨いていきます。結構疲れますハイ。
研磨完了!。鏡面のようにピカピカになりました。まだ若干変色が残っている部分もありますが、あまり無理をしてギリギリまで攻めることは避けます。
滑りを良くするため、2Bの鉛筆をtenonに塗布(無理な力がかかってtenonルーズが起こるのを未然に防ぐことが出来ます)し、ステムをボウルに装着します。
全体を再びポリッシングクロスで優しく磨きます。
マウスピースにも若干ワックスを伸ばしておくと、変色を防ぐことができます。この後、まだボウル内に臭いが残っている場合、本格的にソルト+アルコールメソッドでトリートメントしてあげてください。
Pipes & Tobaccoマガジンの上でFour Dot Rusticと一緒に記念撮影!届いたときには古びた中古パイプ然としていたOld Englandがあっという間にバリバリ現役パイプに!このパイプはとんでもなく旨いパイプで、レストアの苦労に完全に報いてくれました♪
この後も、喫煙するごとに(もしくは暇を見て)ボウルをポリッシングクロスで磨き続けると、光沢が増していきます。ボウルトップに堆積したタールも、喫煙後ボウルが温まっているうちに少量の水分を含ませたティッシュなどで根気良く拭い続けることで、ほとんどを落とすことができます。道具は使わないとダメになる、とはよく聞く言葉ですが、オールドパイプも丁寧に使用していくことでどんどん状態が良くなっていくものなのです。