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オキシクリーンを使用するのは、まっ黄色にまで変色した重度の酸化マウスピースが対象です。軽い変色に使用するのは変色を進行したりなど逆効果にもなりえるので避けたほうが賢明です。マウスピースの軽度の変色・曇りは、プラスチック用コンパウンドで磨くのがベストです。ともあれ、マウスピースを研磨するときにはエッジの保護に十分留意してください。
また、方法は問わず「研磨」は「削る」ことと同義です。時にはマウスピースのシェイプを損なうことにつながります。真っ黒なエボナイトの表面は魅力的ですが、レストアにおいてピアノブラックを目指すことが常にベストの選択ではないことにも留意してください。
estateパイプを扱う上で、バルカナイト製マウスピースの変色は深刻な障害となる。とりわけebayで落札したパイプにはシリアスな状態のマウスピースも多く、しばしば茶色を通り越し、黄色になるまでヴァルカナイトが変色しているものに遭遇することも珍しくはない。適切にヴァルカナイトをポリッシュし、ピアノブラックの質感を取り戻すことはヴィンテージパイプを楽しむ上で非常に重要なテクニックである。
マウスピースのポリッシングには大別して(主にバフモーターで)マウスピースをパイプに取り付けたまま、トリポリなどの研磨剤で磨くオンパイプ・ポリッシングと、マウスピースをパイプから取り外して(主にハンドフィニッシュで)サンドペーパー・コンパウンドを駆使して磨くオフパイプ・ポリッシングがある。オフパイプ・ポリッシングは常にマウスピースショルダー(シャンクとの接点となるエッジ部分)のラウンディング(磨耗)の危険性があるが、研磨する場所を細かく調整でき、適切な方法を用いれば、オンパイプのようにパイプのシャンクにダメージを与えることもなく、バフモーターでリップやダイヤモンドシャンクのエッジを丸ごと磨耗させてしまうことも少ない。今回は後述するオキシクリーン・トリートメントをコンビネーションさせてベストの結果をマウスピースにもたらすオフパイプ・ポリッシングの方法を紹介する。
『―オキシクリーンは、酸素のナチュラルパワーで衣類等の頑固な汚れ・シミをパワフルに分解する、多目的汚れ・シミ抜きクリーナーです(商品説明より)。』このアメリカの家庭で人気の高い、非塩素系漂白剤を使ってヴァルカナイトの変色を軽減するのがアメリカのヴィンテージパイプコレクターの間で近年発見されたテクニック、オキシクリーン・トリートメント(略称Oメソッド)(※1)である。オキシクリーンは最近では国内に輸入されているので、近所のドラッグストアで容易に入手できると思う。通販でも500g500円程度で購入できる上、日常の掃除や洗濯などにも使える(そちらが本来の目的だが…)のでヴィンテージパイプコレクターならば持っておいて損はない。
・オキシクリーン
・広口瓶もしくは古いタッパーウェア(マウスピースが入る大きさのもの)
・太目のパイプクリーナー1本。使用済みのもので可。
・メラミンフォーム(激落ち君などの商品名で売られているもの)
・サンドペーパー400番〜600番(マーク消し用)
・耐水ペーパー1000番〜2000番(研磨用)
・プラスチック用コンパウンド
・ウェス
レストアに取り掛かる際、マウスピースの状態がシリアスであるならOメソッドを適用する。変色が軽度の場合はOメソッドをスキップしてステップ2に進んで構わない。
注意! マウスピースにホットスタンプ類が刻印されている場合、オキシクリーンの効果でスタンプは消失する。ホットスタンプ類がある場合は、木工用ボンドをスタンプが完全にカバーされるように塗り、十分に乾燥させてマスキングすること。ボンドが乾いたらOメソッドにかけてもOK。なお、インレイ系のステムマーク(Dunhill White Dot、Comoy 3-piece C logo、Sasieni Four-Dot等)はそのままOメソッドにかけても大丈夫だが、微妙に色抜けがある可能性もあるため、万全を期すならマスキングすることをオススメする。
マウスピースが完全に入る大きさの適当な容器(古いタッパーウェアや広口瓶など)を用意する。オキシクリーンを60℃程度の湯(すごく熱いお風呂のお湯程度)で適量(500mlのお湯に対して10gほど)溶いて、パイプからマウスピースを取り外し、溶液の中にマウスピースを投入する。そのまま三十分ほど放置したのちマウスピースを引き上げ、水ですすいで良く乾燥させる。溶液は茶色に変色し、マウスピースの変色は軽減されているはずである。尚、オキシクリーンの効果はお湯に溶いてから6時間ほどで消失するので、必ず作業を始める直前に溶液を作ること。お湯の温度もある程度高いほうが効果は高い。ただし熱湯を使用するのはマウスピースにダメージを与える場合があるので厳禁。オキシクリーンは毒性が低いので、使用後の溶液は流しや排水溝に廃棄してかまわない。
変色が軽度の場合、サンドペーパーを使用せず、市販のメラミンフォームでOメソッド終了後のステムを丁寧に磨くことで、かなりの状態にすることができる。深刻な変色やティースマークが見られないパイプなら、メラミンフォームの使用だけで十分な場合も多い。メラミンフォームはエッジを磨耗させることがほとんどないので、軽度のステムの場合一度メラミンフォームの使用のみで様子を見てからサンドペーパー掛けに進むことをお薦めしたい。その場合以下の4〜6のステップは飛ばしてかまわない。
ティースマークや深刻な傷がある部分のみ、400番〜600番のサンドペーパーで研磨する。このときに他の部分は研磨しないこと。マーク類が消えるか軽減されたら次へ進む。
ショルダーのエッジを保護するため、写真のようにマウスピースのテノンにパイプクリーナーを巻きつける。こうすることによってエッジ部分に鋭角に耐水ペーパーが当たることを防ぎ、エッジのラウンディングを防止することができる。理想的には専用のワッシャーがあればベストだが、Oメソッドによって変色は軽減されサンディングも軽く行うだけで済むので、パイプクリーナーによる代用でかなりの効果が見込める。
[追記]以下のURLの11/4〜11/6のログに、ガムテープを使ったより効果の高いエッジ保護のTIPSがアップしてあります。参考にしてください。http://twilog.org/oldbriars/
1000番程度の目の細かい耐水ペーパーを濡らし、マウスピースの表面を研磨する。巻きつけたパイプクリーナー部をしっかりと押さえ、耐水ペーパーがショルダーエッジに触れないように注意しながら行う。ダイヤモンドステムは、平らな板状の物の上に耐水ペーパーを濡らして広げ、マウスピースを押し付けて研磨するとダイヤモンドのエッジ部分がラウンディングすることを防ぐことができる。
適宜水を補給し、落ちた変色の廃液を拭いつつ、変色がなくなるまで研磨する。変色が無くなったら耐水ペーパーを2000番に変えて同じように水研ぎを行う。完全にサンディングマークが消えたことを確認したら、マウスピースを水洗いしてよく乾燥させて終了。
サンライト製プラスチック用コンパウンドを使用してフィニッシュを行う。ウェスにコンパウンドを少量つけながらマウスピースをポリッシュし、ミラークオリティにまで磨き上がったら終了。
上の写真は今回行った手法でポリッシュしたステムである。エッジのラウンディングがほぼ最小限に抑えられていることが見て取れると思う。元の状態はそう深刻なものではなかったせいもあり、作業時間はおよそ30分程度で済んでいる。
オキシクリーンを使用すれば、かなり強度に変色したパイプでも、大して強くペーパーで削り落とす必要はなく、番手の高いサンドペーパーで軽く研磨するだけで十分であることがお分かりいただけたと思う。またパイプクリーナーを上手く使用してショルダーエッジを保護する方法と組み合わせれば、オフパイプ・ポリッシングで問題となるショルダー・ラウンドがほぼ皆無と言っていいほどになくなることは感動的ですらある。また労力と作業時間も劇的に低減されることになる。このTIPSを上手く利用してエッジの効いた美しい仕上がりと、より手軽になったレストア作業をお楽しみください。
(※1)オキシクリーン・トリートメントは、シリアスに変色したバルカナイトの酸化部分を表面に浮き立たせて脱色し、結果としてそこそこの状態にすることに意義がある。つまりさして変色していないパイプをさらに黒く美しくするといった用途にはほとんど効果がないばかりか、そのステムがレストア済みの磨き上げられたものだった場合表面を荒らしてしまい、結果として再度ポリッシュする手間が増えるだけといった結果になってしまう。レストア済みのパイプには適用しないほうが無難である。(もちろん再びポリッシュするついでに行うと言った場合なら問題はないが。)