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1932年ロンドン発行の小売店プライスリストは、当時のS.Weingott & Sonの作るパイプのライン名が分かる貴重な資料である。この"The Weingott Pipe"はトップオブザラインのThe Royal Courts Pipeに継ぐハイグレード・パイプで、10シリング6ペンス(※1)。当時のComoy'sのTraditionとほぼ同じ価格のパイプである。
Weingottは国内どころか、海外のビンテージ・パイプコレクションにおいても殆ど馴染みのないメーカーであるが(※2)、このページに掲載された写真を見た方々は一様に驚かれたのではないだろうか。深く魅惑的なウォルナット・プラムのステイン、寸分の隙もないシェイプエグゼキューション、エアフロー理論に基づいたエンジニアリング、フィット、フィニッシュは、まごうことなきハイグレードパイプのそれである。このようなパイプが歴史の中に埋もれてしまうのは非常に惜しく、今後も機会があればサンプルを入手して、Weingottの沿革とそのパイプについて情報を収集していくつもりである。まずは最初のサンプルとしてこのパイプを挙げたいと思う。
また、Weingottの非常に優れた喫煙特性についても触れておかなければなるまい。Weingottは非常に美味いパイプである。そしてその味は個性的でもある。詳細は不明であるが、当時のWeingottファームが製品に何らかのスペシャル・キュアリングを施していたことは疑いの余地がない。とくにこのサンプルのような戦前と思しき個体に関しては(そのアピアランスも含め)、Pre-Trans Barling、Patent Dunhill、Pre-War Sasieniといった錚々たるビッグネームに堂々と渡り合えるクオリティを持っていると考える。
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シェイプナンバーは刻印されていないが、当時のWeingottのシェイプ感覚を実によく伝える堂々たるPot。マウスピースのスタイルは戦前のDunhillのものと酷似している。非常にソリッドで精度の高いボウル・エグゼキューションであるが、微妙なゆらぎがあるためハンドターニングの線すら疑われる。
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深いプラム・ステイン。アピアランスと価格レンジから、このブランド名を冠された"The Weingott Pipe"は、当時のDunhill Bruyereや、Comoy's Tradtionといったダークステインのスムースパイプのハイ・スタンダードではなかったかと想像される。綺麗に保存されたクリスピーなリムに注目。クラシックなノンベベル・スタイルである。
このページのハイライトはこのエンジニアリングである。隙間のないフィット、大きく開口されたリップスロット、そして非常に同時代のDunhillに近い感触のリップ&ビットと、最新の注意を払って作られたパイプであることがよく分かると思う。一番下はコンセントリシティのチェックであるが、寸分の狂いもないアラインメントがよくわかる写真となっている。テノンは無段テノンであるが、これはおそらくDunhillと同様の(このサンプルには付属しないが)INNER TUBEの使用を前提としたものである。
独特のダッシュに挟まれたライン名の刻印は、他のサンプルを見る限りこの時代に特徴的なものと想像できる。メーカーマークはLONDONがWEINGOTTより短くなっているが、datingの資料となるか否かはまだ不明である。
shape: pot
stem: handcut vulcanite
junction: normal
color: walnut/plum
ornament:none
length:144mm
height: 43mm
chamber dia: 22mm
chamber depth: 34mm
weight: 40g
nomenclature:
THE---------
WEINGOTT
--------PIPE (block letter)
WEINGOTT
LONDON (shorter than WEINGOTT)
note:
・トップに軽微なスクラッチ
・状態極上
(※1)1932年プライスリストより。当時Dunhillパイプは統一価格の25シリング、Parker Super Bruyereが7シリング6ペンスである。
(※2)わずかにMike Leverette氏のWeingottに関するコレクションページがあるのみである。