Ye Olde Wood "Fossil" #243 ExEL T.V.F. (1947-52)

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description:

Barlingのシェイプリストでは<Billiard Chubby>にカテゴライズされるのであろうか。PotとBillardの中間に位置するようなファット&ロープロファイルなビリヤード、シェイプ#243のYe Olde Wood "Fossil"。ビリヤードのバリエーションを得意としたいかにもBarlingらしいシェイプと言えるが、この一見中途半端なシェイプが実に使いやすいのには驚かされる。ポットというシェイプの使い勝手の良さとボウルキャパシティ、ビリヤードというシェイプの取り回しのよさと軽快さが上手くブレンドされている感じなのである。これはPot/Billiardの代表格、Alfred DunhillのQuaint Shape #Rに通じる美点と言えるかもしれない。

そしてこのパイプの美点はシェイプのみにとどまらない。Fossilフィニッシュ特有のスーパークラッギーなサンドブラスト・テクスチャ、そして実にソリッドな使い心地のテーパード・マウスピース、そして(言わずもがなだが)Pre-Trans Barling独特の、シルクタッチの極上のスモーキング・クオリティ。さらにこのパイプには、非常に珍しいことだがオリジナルのボックスとスリーブが附属していて、Barlingの歴史に対する考証面でも格好の資料となっている。まさにあらゆる面で死角のない、目下筆者のローテーションの中でエースを担う1本。

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Barling's Make 243 shape execution :↑

一見しただけでは非常に中途半端な上、さしたる魅力もないように思える#243 Pot/Billiardシェイプだが、1度でも咥えて火を入れてみればその評価は容易に逆転する。軽く、ExELサイズだけにキャパシティがあり、チャンバーも深すぎず、Pot特有のチャンバー口径の大きすぎ感もない。そして取り回しはビリヤードとポットの美点をいいとこ取りしたような感がある。Barlingはもしや、奇を衒ったペンシル・シャンクやキャンテッド・ボウルには一瞥もくれず、究極の実用シェイプを目指してこのシェイプを作ったのではないかと疑いたくなるほどである。後述するブラスト・テクスチャとのマッチングも見事の一言。

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Briar texture of Barling's Make Ye Olde Wood "Fossil":↑

一目見た瞬間、思わず声を上げたくなるような素晴らしく深いサンドブラスト・テクスチャ。ワッフル・グレインとでも呼びたくなるパターンである。正直、クラッギーさが売り物のPatent Dunhillでも、これほどのブラストにはお目にかかることはほとんどないのではないだろうか。視覚、触覚に強烈にアピールするだけでなく、このパイプ自体の存在意義を根本的に変えてしまうほどのブラスト・ワークである。現在アメリカのハンドメイド・シーンではMicheal Buteraを源流とする、深いクラッギーなブラストが(J.T.D Cooke、Larry Roush、Brian Ruthenberg etc..)大人気だが、このFossilのブラストは、深さでは同等、そしてそのキャラクターに於いては完全に凌駕している。50年もの時を経て、ベースステインが露わとなりオリジナルのプラムカラーはブラウンへと退色しているが、それが風格にまで高まる稀有なブラスト、それがFossilだ。

 

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Engineering of Pre-Trans Barling:↑

(上)無愛想な直線を描くテーパード・マウスピースは有名なFlat-Saddleの影に隠れて地味だが、最上のAlfred Dunhillのビットワークに比肩する快適さを持っている。さらにエアフローの観点ではBarlingの独壇場といっていい。パイプ界でも最大級の開口部と深いファンネルを誇る、ファイナル・エグゾースト部分。

(中、下)このような豪快で魁偉な外見にも関わらず、非常に精密感の高い仕事が垣間見られるのがPre-Trans Barlingのエンジニアリングである。素晴らしいコンセントリシティには入手するたびに驚かされる。

 

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Pre-Trans Barling additional stamping:↑

Pre-Trans Barlingの中でも、Fossilはあまりスタンプに差異がない珍しいグレードである。メーカーマーク、グレード名、シェイプナンバー、サイズコード、フィニッシュ名、P.O.S、T.V.Fデジグネーションのフルセット。Barling Crossステムロゴはほぼ完全な状態で保存されている。

 

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Pre-Trans Barling Box & Sleeve:↑

(上)このパイプには、幸運なことにボックスとスリーブが付属してきた。Ye Olde Woodライン専用のパイプボックス(Fossil専用のものは、Pre-Trans期には存在しなかったようだ)。パイプのシェイプナンバーと呼応したシェイプナンバー243がボックス横のラベルにペンの手書きで書き込んであることから、オリジナルのボックスであることがわかる。蓋裏に書かれたインストラクションは以下の通り。

『―Nothing but the finest quality of old matured Briar Root (racine de bruyere) is used in the manufacture of this famous Barling Pipe. Every bowl is selected by experts, and naturally seasoned in rooms specially erected for the purpose. This seasoning by long strage ensures sweet smoking, greater durability and longer service than those pipes artifically seasoned by treatment with heat and oil. Every pipe stamped BARLING carries the world famous Barling guarantee, behind which is British House of more than 135 years' standing』

この135 years' standingの箇所は、他のボックスのサンプルを調べたところ、5年毎に年数が更新されているようである。(現在135、140、145、150の4種を確認済み)したがってこのボックスが製作されたのはBarling開業の1812年に135を足した1947年から5年間、1952年までと推察できるため、パイプの製造年もそれに近いものと考えられる。

(中)1950年代中期には廃止されたとおぼしき、クラシックなトライアングル・タイプのフラップつきパイプスリーブ。フラップスリーブにも複数の種類が確認されるが、フラップではなく本体にロゴがあるこのタイプのスリーブは主にアメリカ市場向けに使用されたと思われる。

(下)パイプ自体はかなり良く使い込まれた個体であるにもかかわらず、付属品もこうして良好な状態で現存しているのは驚きですらある。パイプの状態からも、前オーナーがこのパイプをとても大事にしていたことが窺える。

 

 

 

shape: #243 billiard pot
stem: handcut vulcanite
junction: normal
color: dark plum sandblast
ornament:none
length: 145mm
height: 45mm
chamber dia: 21mm
chamber depth: 40mm
weight: 41g

nomenclature:
BARLING'S(arched, block)
MAKE(in upper case, block)
YE OLDE WOOD
243

ExEL

"Fossil" (Script)

MADE IN
ENGLAND.

T.V.F.


Barling Cross logo hotstamped on the stem

note:
・ステイン退色
・Barling Cross 90%残存
・ボックス、スリーブ付属