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Pre-Trans Barlingファームは、英国各地のタバコニスト向けにパイプを製作していたことでも有名である。北はエジンバラのM.T.MacDonaldから、東はバースのFrederik Tranterまで、ロンドンのタバコニストに限らず卸先は多岐を極めている。
James J. Foxといえば、現代まで続く格調高いアイルランド・ダブリンのタバコニストとして有名である。James John Foxは1842年ダブリンに生まれ、グラフトン・ストリート(ダブリン市の目抜き通り)のJames Maddensでタバコニストとしてのキャリアを積んだ(このMadden'sのパイプタバコ銘柄のうち幾つかは現在のJ.J.Foxブランドに引き継がれている)。1881年に自らの名前を冠したタバコ・シガーショップを開店し、現在もグラフトン・ストリート119番地に店舗は健在である。このパイプはロンドンはセント・ジェイムズストリートの、Foxのロンドン支店に卸されたパイプである。
こういったタバコニスト名の刻印を持つパイプで、そのタバコニストのオリジナル・ブレンドを楽しむのもなかなか気の利いた遊びではないだろうか。James J. Foxのオリジナル・ブレンドは現在でも海外のタバコショップで比較的容易に入手できる。
さて、当のパイプの方は、プラムカラーで染色された、非常に愛らしいELサイズ・Bankerシェイプ。Pre-Trans Barlingファームが得意とした、Brandy GlassタイプのボウルがBankerシェイプにも採用されていることは見逃せない。Barling独自のFlat Saddle bitによって、他のどのメーカーにも作ることのできない独特なシェイプとなっていることに注目。
Brandy Glassボウルというとデニッシュ・ハンドメイドのイメージが強いが、最初のオリジネーターはPre-Trans Barlingファームである。Kettner'sのダイジェスティフ・グラスに想を得たといわれるこのシェイプは、ボウルトップが窄まったBarling独特のもの。1/4ベントのシャンクがコンビネーションされ、全体ではCharatanが得意としたBankerシェイプに酷似したものとなっている。
この個体はプラム・ステインがまだかなり残存している。
やはり非の打ち所のないBarlingのエンジニアリング。ELサイズにしてはかなり小振りなパイプであることを考えると、この精度には感嘆せざるを得ない。
スタンプ類のアップ。ファクトリー・クリスプなBarling Crossに加え、Pre-Trans最後期に使用されたBarling Designの刻印がステム裏に存在する。シャンクファーサイドには誇らしげなJ.J.FOX & Co.のタバコニスト刻印。
shape: (N/A) banker
stem: handcut "Flat" Saddle vulcanite
junction: normal
color: plum
ornament:none
length: 135mm
height: 30mm
chamber dia: 17.5mm
chamber depth: 27mm
weight: 35g
nomenclature:
BARLING'S(arched, block)
MAKE(in upper case, block)
J.J.FOX & Co
LONDON
EL
Barling Cross logo hotstamped on the stem
note:
・インナーリムアウトラウンド少々