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トラディショナルで重厚、寡黙にして謙虚なメーカーの印象とは別に、Pre-TransitionのBarlingファームにはもう一つの、前衛的と形容できるほどのマウスピースの革新者としての顔があった。Barlingの代名詞であるFlat Saddle Mouthpieceは、その最も成功した例である。
Barling Denture Pipeは義歯使用者に向けられた"Denture"マウスピースを備えたパイプのラインである。1950年代当時のイギリスの義歯の性能がどの程度のものであったのかがはっきりしないので、果たしてこのパイプに十分な実用性があったのかは良く分からない。しかしBarling特有のエアフローへの配慮、一般的なDenture Bitとは異なるコンストラクションのほかにも、健常な歯列を持つスモーカーにも快適に使えるような工夫が凝らされており、やはりPre-Trans Barlingファームのマウスピースに対する関心が並々ならぬものであったことが非常に良く分かるサンプルとなっている。詳しくはこのパイプに付属していた当時のパンフレットをご覧になって欲しい。
ビッグボウル・シックウォール・テーパードシャンクと、BarlingのPotシェイプ・エグゼキューションの特徴はこのDenture Pipeのボウルターニングにもそのまま生かされている。極めてトラディショナルなスタンメルと、革新性が凝縮したかのようなDenture Bitが一体化して興味深いコントラストを形作っている。ラディカルにラウンド化されたボウル底面が、ゆるやかにテーパーしていくシャンクになだらかにつながっていく様は、一見無骨にも見えるこのPotというシェイプにエレガントさすら付与している。
フィニッシュはBarlingのほかのグレードにも共通するナチュラルカラー。コントラスト・ステインでこそないが、黄金色に輝く薄色部は実に見事で、ボウル両側面に浮き出たクロスカット面と相まって非常に暖かい感触を演出している。尚、Barling Denture Pipeの価格は、1935年当時で10シリング(スモールサイズ)と、Barling Standard Briarと同価格であるため、Barling Denture PipeはStandard Briarのマウスピース違いバージョンと考えることが出来る。
(上)これが問題のDenture Bitのアップ。斜め上に伸びるパドル部は、歯列が存在しなくても歯茎の裏側に優しくフィットする形状をしている。バイト部に刻まれた数条の刻み目は、歯列を備えるスモーカーでもマウスピースをしっかりとホールドするための配慮である。また、通常のDenture Bitとは異なり、パドル部にエアホールが開口するのではなく、オーセンティックなマウスピースと同じ位置にエアホールが開口していることに注目。これは単に成型したエボナイト・ロッドを曲げ加工するよりも何倍も手間がかかる工程である。その開口も大きく開けられており、エアフローに対する配慮を伺わせる。
(下)そのほかのエンジニアリング、ジャンクション部に関しては通常のBarling製品に準じている。
スタンプ類は、特にDenture Pipeをあらわすものは用意されていない。標準的な戦後のBarling Standard Briarと同一の刻印群。タバコニスト刻印はバーミンガムのHollingsworth。
shape: pot
stem: "Denture" mouthpipece
junction: normal
color: natural
ornament:none
length: 133mm
height: 40mm
chamber dia: 22mm
chamber depth: 36mm
weight: 38g
nomenclature:
BARLING'S(arched, block)
MAKE(in upper case, block)
HOLLINGSWORTH
BIRMINGHAM
ExEL
Barling Cross on the stem
REGD DESIGN
note:
・ハンドリングマーク少々
・Barling Cross 70%残存