2021年現在、お気に入りのパイプ煙草

2月 25th, 2021

変わっていくパイプ煙草シーン

数年前にいくつかのパイプ煙草関連のエントリを書いた時と、2021年となった現在ではパイプをめぐる状況というのは随分と様がわりしました。ひとつには、煙草の入手性の問題。それが起こる以前は想像もできなかったことですが、2018年にアメリカのクラフト煙草シーンの中心であり、業界を牽引していたマクレーランド・タバコ・カンパニーの廃業という衝撃がありました。そして英国の法改正により、英国国内の煙草販売業者は煙草を海外に発送することができなくなり、過去にこのブログで紹介したGQ tobaccoも“ブティック・タバコニスト”としての業態を諦めざるを得なくなりました。結果として素晴らしい銘柄の数多くが入手困難となったのです。

もうひとつは、ライフスタイルの問題。これは個人的なことですが、コロナ禍に先んずる2018年よりほぼ完全な在宅勤務に移行したことで、僕にとってパイプ煙草の重要性はいや増しになりました。幸いながら完全在宅でも支障がない業務なうえ、自室も特に禁煙ではないので仕事をしながらパイプを吸いまくっています(シガレットは止めてしまったので喫煙はパイプ煙草だけです)。このライフスタイルの変化は、煙草の好みにも深刻な影響を与えました。具体的には、以前はあれほど好きだったラタキアやオリエンタルが<まったくと言っていいほど>吸えなくなってしまい、かといって一般的なストレートバージニアは神経を使うので、それ以外のブレンドの中から飽きずに吸える銘柄のみを選んで偏愛している次第です。

こんな2021年に、僕が楽しんでいるパイプ煙草を紹介したいと思います。基本的に一日中パイプを銜えており、平均10ボウル程度を灰にしているので、何ボウルも吸っても飽きない銘柄が中心です。また前述の通り煙草の好みが変わってしまったので、ラタキア入り、オリエンタル入りの銘柄は除外されています(どちらの煙草葉も、一日1ボウル程度だったら実に美味しく吸えるのですが)。

・ガーウィス・ホガース エナーデール

「レイクランド煙草」にカテゴライズされる、独特な香料の使いかたが日本国内でも知られたイギリス煙草ですが、2020年になってようやく試してみたところ非常に気に入ってしまうという仕儀に相成りました。バージニア+バーレーをベースとして、アーモンド香料と数種のフローラルアロマの組み合わせで香り付けされていますが、いったいどういうブレンドの妙なのか、クリームソーダ(喫茶店で飲むあの懐かしい飲み物です)を彷彿とさせる甘い香りが楽しめます。燃焼特性も非常にすぐれていて吸いやすく、単純な味だけで言えばガーウィス・ホガース以外の他社製品含めレイクランド煙草の中でも1、2を争う美味さの煙草だと思います。かなり香りも味も強い煙草なので、ローテーションの中でここぞという時に1ボウルだけ楽しむという感じで吸っています。

・ガーウィス・ホガース No.7 ブロークンフレーク

これもレイクランド煙草ですが、こちらは常喫煙草として1日数ボウルは灰にするという、いまだかつてないほどお気に入りになった銘柄です。レイクランドの香りはバニラ+フローラルで、香り付けの強さは中程度。こちらも葉組はバージニア+バーレーでとても喫煙が楽です。以前には国内では名前も聞いたことがなく、そのそっけない銘柄名もあいまってガーウィス・ホガースのラインナップの中でも目立たない印象でしたが、試してみたらとても気に入ったので大量に購入して1年ほど熟成させたものを吸っています。熟成させるとさらに美味くなる点もすぐれています。自分にとっての福音とでも言える煙草です。

・ガーウィス・ホガース ブロークン・スコッチ・ケーキ

<ライトなストレートバージニアで特筆すべき点もない煙草>という紹介がなされることが多いこの銘柄ですが、僕の評価は異なっています。僕にとってこの煙草は<常喫向けに特化した、かなりハードなヘビースモーカー向け煙草>というもの。一般的なバージニアリボンのように甘ったるくなく、その奥底にはシガーやスワレを思い起こさせるかすかな渋みがあって、一日中吸っても飽きることがありません。軽いため連続して喫煙してもニコチンのオーバーロードを起こさず、パイプに極めて楽に詰められるところも、イライラして手際が雑になりがちな仕事中はうれしいものです。非常に地味な銘柄ながらわざわざ缶入り形態での販売もなされているのは、僕のようなヘビー(パイプ)スモーカーから一定の需要がある証左でしょう。特に吸いたい煙草が思いつかないときには無意識にボウルに詰めてしまうので、500グラムバッグがどんどん減っていくのを閉口しながらながめています。

・ガーウィス・ホガース スライスト・ブラウンツイスト

パイプ煙草のなかでも最も古い形態であり、葉巻と似た構造で煙草葉を縒りあげたうえ、加熱・加圧し熟成させるというロープ煙草ですが、今となっては往時の製法そのままの『本物の』ロープ煙草を作っているのは世界広しといえどもガーウィス・ホガースただ一軒でしょう。こと純粋に味だけで判じればこのガーウィス・ホガースのブラウンツイストこそ、複雑で奥深く滋味深く、<この地球上で一番うまい>煙草だと考えています。ただし非常にクセが強くニコチンも強烈なので、体調がよく気合も十分なときでないと吸う事はできません。そんな瞬間が訪れたときのために常備しています。「スライス」バージョンのコインカット形態はロープそのままのパッケージとは違い、軽く揉み解せばすぐ喫煙できるのでこの煙草の高いハードルを幾分下げるのに役立っています。

ガーウィス・ホガースの500gパッケージ。フレイクは箱、ミクスチャ類はプラスチックバッグで届く。

…蓋をあけてみればガーウィス・ホガースの煙草がずらり。とにかく大量のパイプ煙草を吸うので、500gという大容量でのパッケージが用意されているという利点はあるのですが、なによりも煙草の質(?)が性に合っているというのと、スモーカーによって好悪の差が激しいレイクランド・スタイルという煙草に全く拒否反応がない、という理由が大きいです。このブランドは北米のディストリビューターとの間に問題があって長いこと入手困難でしたが、去年(2020年)の暮、Smokingpipes.comを運営しているLaudisi Enterpriseが新たなディストリビューターとなったことが発表されました。これで入手がしやすくなれば大変ありがたいです。

マクレーランドやGQ Tobacco、そして英国パウチ煙草が入手不可能となったことはほんとうに残念です。がしかし、この痛恨事を我々パイプスモーカーを新たなるパイプ煙草探索の冒険へといざなう契機とみなすこともまた可能でしょう。ここでは特に触れていませんが、世界にはまだまだ優れたパイプ煙草が存在し、未だに体験したことのない味わいが隠れているのです。ライフスタイルの変遷もありましたが、個人的にも味覚の充実という意味では2021年の現在こそが最もパイプスモーキングを楽しめている時期かもしれません。

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