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パイプの挙動

6月 24th, 2013

「技術」とか「パイプの扱い」とか言うことがよく言われるパイプスモーキングですが、その割にはその技術とは何か、を書いてあるものがあまりにも少ない。自転車の乗り方と同じで、習うより慣れろ式というか、これが初習者を(そしてもっとキャリアの長いスモーカーをも!)混乱させる原因となっている気がします。

以前にも書きましたが、つまるところパイプスモーキングとは細かな物理現象の集まりに過ぎません。確かに色々な要素が絡んでくるし、スモーカー個人個人にも個性があるため、一概に<これが上手く吸うための方法だ>と言うことはできませんが、その手がかりとなるようなパイプの基本的な挙動についていくつか書いて置こうかと思います。

1.パイプ喫煙の基本

その前にパイプ内の煙草が何故燃えるかを考えて見ましょう。

パイプ内での燃焼のしくみ

パイプの内部で煙草葉が燃える条件とは、

  • ・燃焼に十分な酸素が供給される
  • ・火種となっている葉が燃え尽きたとき、隣接する葉に火が燃え移るだけの密度が確保されている

単純に思えるかもしれませんが、実は煙草葉がちゃんと燃える条件とはこの二つだけです。逆に言えば、この二つの条件のどちらかが停止すると、煙草の火は消えます。

パイプ喫煙のパラメータ

a)の条件を満たすために、スモーカーがパイプに入力することのできるパラメータのことです。これは基本的には、

  • ・<ボウル内の煙草の密度>
  • ・<ドロー(吸気)の強さ>
  • ・<ドローする間隔>

の三つしかありません。とかく神秘的に語られがちなパイプ喫煙ですが、その変数はこの三つに集約することが可能です。この三つを適切にバランスさせたときに理想的なパイプ喫煙ができるわけです。『パイプを上手く吸え!』と言われてもどうすればいいか皆目見当がつきませんが、この三つのパラメータを適切に維持しなさい、と言われればなんとなくできそうな気がしてきませんか?自分の喫煙スタイルを見直すときに、この三つのパラメータを念頭に置くことによって問題の切り分けが格段に簡単になります。

2.パイプがスモーカーに伝えるインフォメーション

ジュース

パイプ喫煙の敵とも言われるジュース。パイプスモーカーにとっては鬼門であり忌避されるこの現象ですが、はたしてあなたがジュースと呼んでいるものは本当にジュースでしょうか。一般にジュースと呼ばれるものは、次の三つに分類できます。

  1. シャンク内、ジャンクション部で発生する水分。これはジャンクション部で空気が乱流を起こすことが原因。ガーグリングの原因にもなり不快だが、主にパイプの作りが悪いために起こるもので、厳密にはジュースとは言いがたい。
  2. 唾液の逆流。これもジュースとは言いがたいもの。
  3. ボウルの下部で発生し、煙草を濡らす水分。これが本来の意味でのジュースである。原因は火種で暖められた煙がストリームとなって煙草葉の堆積を通過する際に、過度の抵抗によって持っている水分を葉に付着させてしまうことによって生じる。最初に生じたジュースが煙草葉を湿らせると、さらに抵抗が増してジュースが発生する条件を強固なものにしてしまうため、一度水分を生じさせると加速度的に喫煙が困難になっていく(つまり発生させないことが大事)。1.2に関しては喫煙方法というよりも、パイプの作りを見直したり、唾液をきちんと処理する習慣を身に着ければ解決する問題ですが、この真の意味でのジュースに対処するにはパイプに入力するパラメータを考慮しなおす必要があります。

片燃え

片燃えとは煙草が均一に燃焼するのではなく、ボウルのある特定の部分だけ燃えていく現象ですが、この片燃えにも種類があり、原因も対処方法も全く異なります。

  1. 片燃え:ボウル内の煙草表面の、周辺部の一点だけが燃え進んでいく現象。これは主に煙草の詰め方が緩すぎる場合に発生する。
  2. 煙突燃え:ボウル内の煙草表面の中心だけがズブズブと燃えていき、周辺部が燃え残る現象。これは主に煙草の詰め方が固すぎる場合に発生する。

フレームアウト

煙草の火が消えてしまうことです。これはスロースモーキングの観点から必ずしも悪いこととは言えないのですが、火種を維持し喫煙を継続しようとしているのに火が消えてしまう場合は、どこかに問題があるはずです。

  1. 煙草の詰め方が緩すぎてフレームアウト:煙草の詰め方が緩すぎ、火種の火が次の煙草葉に燃え移ることができないために火が消える。適切な固さで詰めていても、ボウルが進む内に密度が疎になって生じることもある。タンピングで解決できる。
  2. 煙草の詰め方が固すぎてフレームアウト:煙草の詰め方が固すぎ、ボウル内煙草葉の堆積に空気が通らなくなって酸欠を起こして火が消える。ドローの量と回数を増加することで解決するが、あまりにドローを強くしすぎるとストリームの抵抗が増してジュースの可能性が増大する。ピックを使うか、最初から煙草の葉を詰めすぎないことで解決する。

以上基本的なパイプの挙動を書いてみました。ここでは仔細なテクニックに関しては触れませんが、パイプの挙動を正確に判断することで問題の解決は容易になっていきます。自分自身のパイプスモーキングを見直す際の参考になると思います。

続・よいパイプとは何か

6月 11th, 2013

前回の記事(「よいパイプとは何か」)は<よいパイプとはコントロール性の良いパイプのことである>と結論しながら、ではそのコントロール性の良いパイプとは何かということに触れておらず、読者の方々にストレスを感じさせる内容でした。今回はよいパイプの具体的な要件について考えてみたいと思います。

「煙のカタチ」

本題に入る前に前提として、「煙のカタチ」の話を少し。シガーを吸われる方なら誰もが一度はやったことがあるはずだと思います。《葉巻の吸いさしをパイプに差して吸う・もしくは葉巻の葉を細かく解してパイプで吸う》というやつ。期待通りの味になりましたか? 多分ほとんど全ての人が『こんなの全然葉巻の味じゃない!』と、パイプで葉巻を吸うことの無意味さを悟ったと思います(葉巻がああいった形で、ああいった方法で吸われる理由ですね)。不思議なもので同じものを燃やしているはずなのに全く味が違う。これはシガーの吸い口から直接口内に入ってくる煙と、パイプの中を通って口に届く煙のカタチが異なるからです。同じ葉巻の煙が、パイプのボウルを通りボウルボトムで90度曲がり、煙道を通りステムを通りリップスロットで平らな形になるうちに、すっかり別の味に変化してしまう。煙草の煙とは僕らが考えている以上に繊細なもので、その流体?としてのカタチが変化させられると味まで変わってしまうらしいのです。同じことは例えばシガレットに空気撹乱型のヤニ取りホルダーをつけた時にも言えます。つまり煙草の煙を最も良く、ありのまま味わうためには、できる限りこの「煙のカタチ」に影響を与えないようにしてスモーカーの口に届ける必要があるのです。

エアフローの概念

このときに重要になってくるのが「エアフロー理論」という概念です。この概念は「In Search of Pipe Dreams」の著者であるリック・ニューカム氏がいまから10年ほど前に提唱したもので、アメリカのパイプコレクター団体NASPCの機関紙である「Pipe Collector」誌に掲載されたケン・キャンベル氏の記事よって広まったものです。要約すると美味いパイプには共通点があり、そのキーとなっているのは滑らかなエアフロー(空気の通りかた)である、というものです。つまり前述した「煙のカタチ」に影響を及ぼさない空気の通り方、これが良いエアフローであるというわけです。(現在ではエアフロー理論を重視することは北米のパイプ作家たちの間でほぼ必須となっており、この理論に忠実にパイプを製作していることを売りにしている作家も数多く存在しています。)

良好なエアフローを実現するには、いくつかのポイントがあります。

1 煙道の太さ

ボウルからシャンクを通る煙道の太さ。この直径が太ければ太いほど煙はスムースに流れます。あまりに太いと煙草の葉が煙道内に入ってしまうので、上限はあります。大体3.5mmから4.5mmぐらいがエアフローを保障しつつ実用的な煙道径だと考えられています。

2 リップスロットの容量

リップスロット(マウスピースの終端部で、平らに切られている煙道の出口)も非常に重要です。どんなに煙道径が太いパイプでも、この終端部の出来が悪いと良いエアフローは実現できません。リップスロットはできるだけ深く、V字状になってマウスピースの奥に向かって切り込まれ、滑らかに煙道と接続している必要があり、その空間の厚みも上下に大きければより有利になります。マウスピースのビット部分(歯でバイトする部分)の薄さを確保しながらVスロットの容量を広げるのは脳外科手術にも似たスキルを要求するもので、パイプメーカーにとって非常に手間と時間が必要とされる作業になっています。十分に広く深いVスロットは、太い煙道から流れ出る煙を阻害せず、また口中に柔らかに煙を広げる機能もあります。パイプ全体の長さから言えばほんの1インチ程度の部分ですが、エアフローの良し悪しを最終的に決定付ける部分です。

マイケル・リンドナーのリップスロット

マイケル・リンドナー(米)作のパイプのリップスロット。開口部の巨大さが目を惹くが、その深さはなんと1インチにも達する。

3 スムーズな流体移動

シャンク内に大きな突起やズレがあれば、良いエアフローの障害となるばかりか、結露が生じてガーグリング(水滴がゴボゴボと音を立てる不快な現象)を起こしたり、汚れが蓄積されたりして問題すら生じます。ジャンクション(シャンクとステムの接合部)内部には、できるだけギャップが少なく、煙が衝突する突起などがないことが理想的です。このためにパイプ作家は、モーティス(いわゆるダボ穴)の底にテノン(いわゆるダボ)とのギャップ(テノンギャップ)ができないように注意したり、テノン開口部にベベル(面取り)を施したり、パイプ内煙道とシャンク内煙道が同一軸上にアサインされること(煙道アラインメント)に注意を払ったりしています。

ベベルされたテノン

ベベル(面取り)されたテノンの一例。煙が滑らかにテノン内に進入できるようになっている。ブライアン・ルーセンバーグ(米)。

このエアフロー理論に忠実に製作されたパイプが必ずしも<美味いパイプ>になるとは限りませんが、少なくとも<快適なパイプ>にはなります。エアフローの良さはそのまま前回の記事で触れたコントロール性に繋がるのです。エアフローに優れたパイプは喫煙中のインフォメーションをスモーカーに忠実に伝達するため、初心者でも使いやすく、また喫煙技術の上達を助けます。ベテランにとってもストレスがなく使うのが楽しいパイプになることは間違いありません。

よいパイプとは何か

6月 9th, 2013

よいパイプとは何か。これはパイプスモーカーを酷く悩ませる命題です。

高価なパイプ?グレインが良いパイプ?これは多くの人が安いグレインが悪いパイプでも美味しいパイプに当たったことがあるでしょうから、単なるお金持ちの自慢だと考えてよさそうです。ロングシャンクのパイプ?ベントしたパイプ?もしそうならこれらのシェイプが大半になっているんじゃないかな。ビンテージパイプ・コレクターとしての僕の口からは<ブライヤーの質>だの<キュアリング>だのという言葉が出てくることを期待している人もいるかもしれないけれどここではその辺りに触れることはやめておきましょう。

僕の経験と信念では、良いパイプとは『コントロールしやすいパイプ』ということになっています。

コントロールの良さ。これはボウルの大きさから煙道の太さ、リップ内スロットの形状など色々な要素が複雑に混じりあって生まれるものですから、一概にこれこれこういうパイプが良いパイプだ、とは言いにくいのですが、コントロールのしやすさは良いパイプの第一条件です。どんなに味が美味いパイプでも、あまりに使いにくいものはローテーションから外れていってしまうのを経験した方も多いはず。

コントロールが良いパイプとは、思うままに煙を操れる、操作性が良いパイプのことです。こういったパイプは初心者でも簡単に扱えるし、ベテランならストレスを感じることなくそれこそ官能を感じるほどの<煙を操る>感覚を味わえます。勿論上手く吸えることにも繋がるわけで、煙草も美味しく吸えるわけです。

逆に、コントロールが悪いパイプを使っていると、喫煙技術は向上しません。初心者にはパイプのせいで自分の喫煙法のどこが悪いのか、原因を特定することが困難になるからです。ベテランといえども、使いにくいパイプをわざわざ使いこなすのは、遊びとしては面白いでしょうが普段の喫煙としてはストレスが溜まります。

特に初心者は、コントロールの良さから得られる恩恵は非常に大きいです。コントロールの良いパイプを使いましょう。

パイプ煙草のテクニック

6月 8th, 2013

以前上げた動画です。

YouTube: パイプ喫煙:詰め方から着火まで
http://www.youtube.com/watch?v=CReoGCksKrI

YouTube: パイプ喫煙中の煙の量
http://www.youtube.com/watch?v=7H7KXZs_tJQ

僕は基本的にテクニックには拘泥しないほうで、パイプなんざ好きに吸えばいいじゃねえか、他人様をヘタクソだの上手いだの評して何になるんだ、と考えているタイプの人間なんですが、初心者の方があれこれ文字だけの情報を読んで苦労しているのを見て、動画で説明すれば文字よりはるかに理解が早いだろう、ということでアップした動画です。

iPhoneで片手撮りしているので大変見にくく、しかもマイクが近いために舌使い(まあエロいw)の音まで収録されてしまっていますがご容赦ください。