2013年6月の記事
パイプの挙動
「技術」とか「パイプの扱い」とか言うことがよく言われるパイプスモーキングですが、その割にはその技術とは何か、を書いてあるものがあまりにも少ない。自転車の乗り方と同じで、習うより慣れろ式というか、これが初習者を(そしてもっとキャリアの長いスモーカーをも!)混乱させる原因となっている気がします。
以前にも書きましたが、つまるところパイプスモーキングとは細かな物理現象の集まりに過ぎません。確かに色々な要素が絡んでくるし、スモーカー個人個人にも個性があるため、一概に<これが上手く吸うための方法だ>と言うことはできませんが、その手がかりとなるようなパイプの基本的な挙動についていくつか書いて置こうかと思います。
1.パイプ喫煙の基本
その前にパイプ内の煙草が何故燃えるかを考えて見ましょう。
パイプ内での燃焼のしくみ
パイプの内部で煙草葉が燃える条件とは、
- ・燃焼に十分な酸素が供給される
- ・火種となっている葉が燃え尽きたとき、隣接する葉に火が燃え移るだけの密度が確保されている
単純に思えるかもしれませんが、実は煙草葉がちゃんと燃える条件とはこの二つだけです。逆に言えば、この二つの条件のどちらかが停止すると、煙草の火は消えます。
パイプ喫煙のパラメータ
a)の条件を満たすために、スモーカーがパイプに入力することのできるパラメータのことです。これは基本的には、
- ・<ボウル内の煙草の密度>
- ・<ドロー(吸気)の強さ>
- ・<ドローする間隔>
の三つしかありません。とかく神秘的に語られがちなパイプ喫煙ですが、その変数はこの三つに集約することが可能です。この三つを適切にバランスさせたときに理想的なパイプ喫煙ができるわけです。『パイプを上手く吸え!』と言われてもどうすればいいか皆目見当がつきませんが、この三つのパラメータを適切に維持しなさい、と言われればなんとなくできそうな気がしてきませんか?自分の喫煙スタイルを見直すときに、この三つのパラメータを念頭に置くことによって問題の切り分けが格段に簡単になります。
2.パイプがスモーカーに伝えるインフォメーション
ジュース
パイプ喫煙の敵とも言われるジュース。パイプスモーカーにとっては鬼門であり忌避されるこの現象ですが、はたしてあなたがジュースと呼んでいるものは本当にジュースでしょうか。一般にジュースと呼ばれるものは、次の三つに分類できます。
- シャンク内、ジャンクション部で発生する水分。これはジャンクション部で空気が乱流を起こすことが原因。ガーグリングの原因にもなり不快だが、主にパイプの作りが悪いために起こるもので、厳密にはジュースとは言いがたい。
- 唾液の逆流。これもジュースとは言いがたいもの。
- ボウルの下部で発生し、煙草を濡らす水分。これが本来の意味でのジュースである。原因は火種で暖められた煙がストリームとなって煙草葉の堆積を通過する際に、過度の抵抗によって持っている水分を葉に付着させてしまうことによって生じる。最初に生じたジュースが煙草葉を湿らせると、さらに抵抗が増してジュースが発生する条件を強固なものにしてしまうため、一度水分を生じさせると加速度的に喫煙が困難になっていく(つまり発生させないことが大事)。1.2に関しては喫煙方法というよりも、パイプの作りを見直したり、唾液をきちんと処理する習慣を身に着ければ解決する問題ですが、この真の意味でのジュースに対処するにはパイプに入力するパラメータを考慮しなおす必要があります。
片燃え
片燃えとは煙草が均一に燃焼するのではなく、ボウルのある特定の部分だけ燃えていく現象ですが、この片燃えにも種類があり、原因も対処方法も全く異なります。
- 片燃え:ボウル内の煙草表面の、周辺部の一点だけが燃え進んでいく現象。これは主に煙草の詰め方が緩すぎる場合に発生する。
- 煙突燃え:ボウル内の煙草表面の中心だけがズブズブと燃えていき、周辺部が燃え残る現象。これは主に煙草の詰め方が固すぎる場合に発生する。
フレームアウト
煙草の火が消えてしまうことです。これはスロースモーキングの観点から必ずしも悪いこととは言えないのですが、火種を維持し喫煙を継続しようとしているのに火が消えてしまう場合は、どこかに問題があるはずです。
- 煙草の詰め方が緩すぎてフレームアウト:煙草の詰め方が緩すぎ、火種の火が次の煙草葉に燃え移ることができないために火が消える。適切な固さで詰めていても、ボウルが進む内に密度が疎になって生じることもある。タンピングで解決できる。
- 煙草の詰め方が固すぎてフレームアウト:煙草の詰め方が固すぎ、ボウル内煙草葉の堆積に空気が通らなくなって酸欠を起こして火が消える。ドローの量と回数を増加することで解決するが、あまりにドローを強くしすぎるとストリームの抵抗が増してジュースの可能性が増大する。ピックを使うか、最初から煙草の葉を詰めすぎないことで解決する。
以上基本的なパイプの挙動を書いてみました。ここでは仔細なテクニックに関しては触れませんが、パイプの挙動を正確に判断することで問題の解決は容易になっていきます。自分自身のパイプスモーキングを見直す際の参考になると思います。
最高のパイプライター
よいパイプライターを探すのは結構大変なものです。なぜなら一瞬で火が着くシガレット、着火に時間はかかるものの、一度着けてしまえば1時間は優に楽しめるシガーと違って、パイプライターに課せられるタスクは非常にシビアだから。パイプスモーキングに於いては比較的着火時間が長く、しかも頻繁な着火が要求されます。その炎の質も、パイプのリムを傷めないよう柔らかいものである必要があり、またその使用回数からできるだけランニングコストが安く、タッチも軽く、取り回しのよいものが求められます。これらの項目を高いレベルで満たすライターはそれほど多くはないからです。
パイプスモーカーに人気の定番ライターというものがあります。国産ライターの雄、イム・コロナ・ブランドの<オールドボーイ>。このライターは海外での評価も高く、パイプ関連フォーラムでパイプライターの話になると真っ先に名前が挙がる人気ライターで、自然、海外ショップでも取り扱っている所が非常に多い。他にもサロメのPSD-12や、最近パイプライターに力を入れている坪田パールの<エディ><ボルボ>といったパイプライターも、国内のパイプスモーカーの間では使い勝手が良いと評判です。これらはどれも1920年代に製作されたダンヒル・ユニーク(オリジナルのユニークはオイルライター)の構造を模したリフトアームと呼ばれるタイプのガスライターで、フリントを収めるチューブと、ノズルをコックするリフトアームが構成するアンティークないでたちが特徴です。この現代のライターとは異なった「いかにも」な外見が、「ちょっと違ったモノ好き」なパイプスモーカー達の心をくすぐるのではないか、と僕は想像しています。
しかし最高の使い勝手を誇るパイプ用ガスライターは、これらのうちどれでもありません。
イム・コロナ パイプマギー
<オールドボーイ>のメーカーであるイム・コロナより、ひっそりと発売されているパイプライターに、<パイプ・マギー>というモデルがあります。ちょっと古臭い、昭和の匂いがするエンクロージャタイプのガスライター。一見何の変哲もないローレット着火式のライターですが、一説によるとこのモデルがイム・コロナで最も古いパイプ専用モデルだということです。一見アンティーク調なオールド・ボーイより古いとは意外。
外見こそクラシックですがこのライター、非常に優れものです。というか、僕の知る限りこのライターを超えるパイプライターは存在しません。室内での使用に限られますが、ある程度の時間持続した炎で反復して着火をこなすパイプ用ライターとして、優れた美点をいくつも備えているのです。何人か知人にも薦めてみましたが、皆『このライターを知ってしまうともう他のライターを使う気になれない』と口を揃えます。以下その美点を列挙してみましょう。
ボーン・トゥ・ビー・ア・パイプライター
パイプマギーのフレームノズルは90度の角度がついており、パイプへの着火に特化したものです。バルブはリッドと連動しており、炎はリッドを開けている間は持続しますので、一回の着火が長くなってもどこかに力を入れ続ける必要はありません。また、ライター本体の幅が非常に薄く、ノズルは端のほうについているので、炎をパイプのチャンバーに入れる際に目標を誤らず、確実にボウル内に収めることができます。したがってパイプのリムを傷めることもありません。
スリムな外観
パイプマギーのエンクロージャはスリムで薄く、サイズもとてもコンパクト。各エッジは面取りされ、リフトアームライターのフリントチューブのような突起物もないので、ポケットから出す時にも引っかからず、手に痛みを感じさせません。
確実な着火
ローレット(ローラー)の位置は握るとちょうど親指が当たる位置。ローレットは大きく、表面には深い溝が刻まれており、着火時に指が滑らずフリントストライクを確実なものとします。結果、大して力を入れずとも非常に着火率が高く、着火を繰り返すパイプスモーキングにおいてストレスフリー。ローレットが小さいライターにありがちな、<コスリすぎて指が痛くなる>などということもありません。
シュアなアクション
リッドの開閉はパチリ、パチリとクリック感のある小気味よいもの。親指をわずかに起こすだけでオープン。リッドを支える人差し指に力を込めるだけでクローズ。カカリのよいローレットと併せて、極めて小さい動作で着火が終了します。リフトアームタイプのライターのような大がかりな指の動作は必要ありません。ライターをファンブルする可能性も大幅に低減。
…と、美点をいくら挙げても尽きないほどの素晴らしい、まさにパイプに着火するために生まれてきた、強烈な実用性を持ったライターなのですが、何故かこのパイプマギーは輸出専門モデルに設定されており、国内の喫煙具店では手に入りません。入手するには海外通販するしかなく、またかなりの品薄状態のようです。このような優れた製品が、生産国である日本のパイプスモーカーに知られていないのは返す返すも残念です。できればフカシロさんには国内でも販売してもらいたい!日本のパイプライターはこんなにスゲェんだぞ!と海外のスモーカーに胸を張りたい!…もし海外通販に抵抗がなく、良いパイプライターをお探しの方がいらっしゃったらこのパイプマギーは非常にオススメです。フィニッシュはクロームメッキと金メッキがあり、カービングにも何種類かバリエーションがあります。金メッキは表面が柔らかく、早くアジが出てくる一方、クロームメッキは傷がつきにくくタフで、いつまでも光沢が持続します。(個人的にはシルバープレート=銀メッキのモデルが欲しい!)
/人◕ ‿‿ ◕人\< 僕と契約して、君もまぎぃ使いになってよ!
(※)注意! 外見が非常に良く似たイム・コロナのパイプライターに、CN-1200というモデル(海外での名前はim corona Roller lighter)がありますが、このライターはパイプマギーとは別物です。使い勝手も遠くマギーに及びません。お間違えの無いよう。
追伸:海外ではこのあたりに在庫があるかも。
なお、価格は海外ショップで80~120ドル程度(フィニッシュによる)です。
追伸2:マギーの感想が掲載されているブログ
いや、煙草とわしのメモです。
rattlesnake_com さん
http://cigarpipes.exblog.jp/17637702
PONKOTSU
きむぞうさん
http://ameblo.jp/kimuzo777/entry-11528660910.html
パイプ喫煙が好き
天邪鬼さん
http://blog.livedoor.jp/tak206/archives/51824286.html
続・よいパイプとは何か
前回の記事(「よいパイプとは何か」)は<よいパイプとはコントロール性の良いパイプのことである>と結論しながら、ではそのコントロール性の良いパイプとは何かということに触れておらず、読者の方々にストレスを感じさせる内容でした。今回はよいパイプの具体的な要件について考えてみたいと思います。
「煙のカタチ」
本題に入る前に前提として、「煙のカタチ」の話を少し。シガーを吸われる方なら誰もが一度はやったことがあるはずだと思います。《葉巻の吸いさしをパイプに差して吸う・もしくは葉巻の葉を細かく解してパイプで吸う》というやつ。期待通りの味になりましたか? 多分ほとんど全ての人が『こんなの全然葉巻の味じゃない!』と、パイプで葉巻を吸うことの無意味さを悟ったと思います(葉巻がああいった形で、ああいった方法で吸われる理由ですね)。不思議なもので同じものを燃やしているはずなのに全く味が違う。これはシガーの吸い口から直接口内に入ってくる煙と、パイプの中を通って口に届く煙のカタチが異なるからです。同じ葉巻の煙が、パイプのボウルを通りボウルボトムで90度曲がり、煙道を通りステムを通りリップスロットで平らな形になるうちに、すっかり別の味に変化してしまう。煙草の煙とは僕らが考えている以上に繊細なもので、その流体?としてのカタチが変化させられると味まで変わってしまうらしいのです。同じことは例えばシガレットに空気撹乱型のヤニ取りホルダーをつけた時にも言えます。つまり煙草の煙を最も良く、ありのまま味わうためには、できる限りこの「煙のカタチ」に影響を与えないようにしてスモーカーの口に届ける必要があるのです。
エアフローの概念
このときに重要になってくるのが「エアフロー理論」という概念です。この概念は「In Search of Pipe Dreams」の著者であるリック・ニューカム氏がいまから10年ほど前に提唱したもので、アメリカのパイプコレクター団体NASPCの機関紙である「Pipe Collector」誌に掲載されたケン・キャンベル氏の記事よって広まったものです。要約すると美味いパイプには共通点があり、そのキーとなっているのは滑らかなエアフロー(空気の通りかた)である、というものです。つまり前述した「煙のカタチ」に影響を及ぼさない空気の通り方、これが良いエアフローであるというわけです。(現在ではエアフロー理論を重視することは北米のパイプ作家たちの間でほぼ必須となっており、この理論に忠実にパイプを製作していることを売りにしている作家も数多く存在しています。)
良好なエアフローを実現するには、いくつかのポイントがあります。
1 煙道の太さ
ボウルからシャンクを通る煙道の太さ。この直径が太ければ太いほど煙はスムースに流れます。あまりに太いと煙草の葉が煙道内に入ってしまうので、上限はあります。大体3.5mmから4.5mmぐらいがエアフローを保障しつつ実用的な煙道径だと考えられています。
2 リップスロットの容量
リップスロット(マウスピースの終端部で、平らに切られている煙道の出口)も非常に重要です。どんなに煙道径が太いパイプでも、この終端部の出来が悪いと良いエアフローは実現できません。リップスロットはできるだけ深く、V字状になってマウスピースの奥に向かって切り込まれ、滑らかに煙道と接続している必要があり、その空間の厚みも上下に大きければより有利になります。マウスピースのビット部分(歯でバイトする部分)の薄さを確保しながらVスロットの容量を広げるのは脳外科手術にも似たスキルを要求するもので、パイプメーカーにとって非常に手間と時間が必要とされる作業になっています。十分に広く深いVスロットは、太い煙道から流れ出る煙を阻害せず、また口中に柔らかに煙を広げる機能もあります。パイプ全体の長さから言えばほんの1インチ程度の部分ですが、エアフローの良し悪しを最終的に決定付ける部分です。
3 スムーズな流体移動
シャンク内に大きな突起やズレがあれば、良いエアフローの障害となるばかりか、結露が生じてガーグリング(水滴がゴボゴボと音を立てる不快な現象)を起こしたり、汚れが蓄積されたりして問題すら生じます。ジャンクション(シャンクとステムの接合部)内部には、できるだけギャップが少なく、煙が衝突する突起などがないことが理想的です。このためにパイプ作家は、モーティス(いわゆるダボ穴)の底にテノン(いわゆるダボ)とのギャップ(テノンギャップ)ができないように注意したり、テノン開口部にベベル(面取り)を施したり、パイプ内煙道とシャンク内煙道が同一軸上にアサインされること(煙道アラインメント)に注意を払ったりしています。
このエアフロー理論に忠実に製作されたパイプが必ずしも<美味いパイプ>になるとは限りませんが、少なくとも<快適なパイプ>にはなります。エアフローの良さはそのまま前回の記事で触れたコントロール性に繋がるのです。エアフローに優れたパイプは喫煙中のインフォメーションをスモーカーに忠実に伝達するため、初心者でも使いやすく、また喫煙技術の上達を助けます。ベテランにとってもストレスがなく使うのが楽しいパイプになることは間違いありません。
よいパイプとは何か
よいパイプとは何か。これはパイプスモーカーを酷く悩ませる命題です。
高価なパイプ?グレインが良いパイプ?これは多くの人が安いグレインが悪いパイプでも美味しいパイプに当たったことがあるでしょうから、単なるお金持ちの自慢だと考えてよさそうです。ロングシャンクのパイプ?ベントしたパイプ?もしそうならこれらのシェイプが大半になっているんじゃないかな。ビンテージパイプ・コレクターとしての僕の口からは<ブライヤーの質>だの<キュアリング>だのという言葉が出てくることを期待している人もいるかもしれないけれどここではその辺りに触れることはやめておきましょう。
僕の経験と信念では、良いパイプとは『コントロールしやすいパイプ』ということになっています。
コントロールの良さ。これはボウルの大きさから煙道の太さ、リップ内スロットの形状など色々な要素が複雑に混じりあって生まれるものですから、一概にこれこれこういうパイプが良いパイプだ、とは言いにくいのですが、コントロールのしやすさは良いパイプの第一条件です。どんなに味が美味いパイプでも、あまりに使いにくいものはローテーションから外れていってしまうのを経験した方も多いはず。
コントロールが良いパイプとは、思うままに煙を操れる、操作性が良いパイプのことです。こういったパイプは初心者でも簡単に扱えるし、ベテランならストレスを感じることなくそれこそ官能を感じるほどの<煙を操る>感覚を味わえます。勿論上手く吸えることにも繋がるわけで、煙草も美味しく吸えるわけです。
逆に、コントロールが悪いパイプを使っていると、喫煙技術は向上しません。初心者にはパイプのせいで自分の喫煙法のどこが悪いのか、原因を特定することが困難になるからです。ベテランといえども、使いにくいパイプをわざわざ使いこなすのは、遊びとしては面白いでしょうが普段の喫煙としてはストレスが溜まります。
特に初心者は、コントロールの良さから得られる恩恵は非常に大きいです。コントロールの良いパイプを使いましょう。
昨今の日本のパイプスモーキング界について
ここ最近、インターネットのブログ等を回って見ていると、何か以前よりもゆったりと気負いなくパイプを楽しんでいる方々が増えてきたようにも思えます。実によいことです。
僕がパイプを始めた頃(2005年ぐらいだっけ)は、なんというか過渡期というか混濁期というか、日本のパイプスモーキング界隈は結構ヤバい状況でした。古色蒼然というか千年一日というか、やれ<カーボンを早く付けるにはボウルに蜂蜜を塗ればいい>とか、<煙草は三段詰めにするのが故アルフレェエッド・ドゥンヒル卿の教えだ>とかのクソの役にも立たない古臭い風習がしつこく残っている一方で、とある業者がやれ乾いたブライヤーは美味いだの吹聴すれば誰もがこぞって手持ちのパイプを乾燥剤入りのタッパーにしまいこんだり、とある彫り物職人がパイプのラジエーター効果だのと言い出せばたちまち気味悪い文様が入った白木パイプがブログを賑わせたりと、とにかく古いオカルト・新しいオカルトが入り混じり、迷信・盲信がカオスとなって初心者を惑乱。結果僕らをして「パイプを楽しむ」というところから遠ざけに遠ざけていた状況だったのです。こんなんじゃゆったりと煙草を味わえるわけはねえよ。
かくなる状況はクソ・ダセェ、俺ぁこいつらとは係わり合いになりたくねえでござんす、と思った僕は情報源を海外のフォーラムやウェブサイトに求め、その結果ビンテージパイプなる趣味を見つけてそこに深く耽溺することになったわけですがそれはまた別の話。国内でも数少ない正気の方々がブログやツイッター、さらにはオフミーティングなどで地道に啓蒙活動を重ねた結果、今ではこれらのうちかなりの迷信やオカルトを克服できたように思えます。それが前述したゆったりとパイプを喫っている、趣味として確立したパイプスモーキングを楽しんでいる人たちが多く目に付くことに繋がったのかなあ、と。
僕に言わせれば、パイプスモーキングなんて大して難しいものじゃありません。そりゃ初心者の頃はジュースを沸かせたりパイプを焦がしたりで、勿論それでは煙草を味わうまでにはいかないでしょうが、そんな時期は向上心さえ忘れなければ数年で終わります。考えてみれば簡単なことですが、パイプなんて大して複雑でもない構造物で、適切に煙草を詰めて適切なスピードで吸ってやれば美味く吸えます。そこには摩訶不思議な深遠なる賢者たちの知恵も妖精たちの妙なる魔法もありません。ロマンチックではありませんが単なる物理法則の結果として、パイプは美味しく吸えます。ホントそれだけの話です。
思うに、これまでの日本のパイプ界は「いかにパイプを上手に吸うか」ということに拘泥するあまり、その先に広がる豊かな世界を見ずに来ていたのではないか。喫煙技術は重要ですが、パイプスモーキングに於いてパイプの扱いとはあくまで従の要素に過ぎないものであり、<味わうこと>の主役は煙草です。煙草を知ることこそ、真にパイプスモーキングを楽しむための入り口になると考えます。このブログでも、そこにスポットを当ててエントリを書いていくことになると思います。
パイプ煙草のテクニック
以前上げた動画です。
僕は基本的にテクニックには拘泥しないほうで、パイプなんざ好きに吸えばいいじゃねえか、他人様をヘタクソだの上手いだの評して何になるんだ、と考えているタイプの人間なんですが、初心者の方があれこれ文字だけの情報を読んで苦労しているのを見て、動画で説明すれば文字よりはるかに理解が早いだろう、ということでアップした動画です。
iPhoneで片手撮りしているので大変見にくく、しかもマイクが近いために舌使い(まあエロいw)の音まで収録されてしまっていますがご容赦ください。
現在気に入っているパイプ煙草
僕が現在気に入っているパイプ煙草のリストです。
- Mclelland Oriental No.1
- Mclelland Oriental No.6
- Mclelland Bulk 2020
- Gawith Hoggarth Curly Cut Deluxe sliced (CCD)
- Gawith Hoggarth Rum Twist unsliced
見ても分かるとおり、マクレーランドとガーウィズ・ホガースの煙草に集中していますね。マクレーランドはアメリカのクラフト煙草メーカー(趣味的で高品質なプロダクションを目指す小規模メーカー)の祖にして雄、そしてガーウィズ・ホガースは北イングランドの歴史ある煙草メーカー。この二メーカーがお気に入りなのはハッキリとした理由があります。そのことについては長くなるので各煙草のレビューを書きながらおいおい説明していきます。
ブログ始めました
Ye Olde Briarsの中の人として、日々考えることやパイプ関連の情報はすべてツイッター(https://twitter.com/oldbriars)に投稿していましたが、TIPSや考察、タバコやパイプのレビュー、イベント情報など、固定した形で読めるメディアの必要が強くなってきました。ということでYe Olde Briars Blog、略してYOBlogを開設します。よろしくお願いします。