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ライアン・オールデン:常に価格以上の価値を求めて

8月 14th, 2015

円安が続き、海外のパイプショップに並ぶパイプがどれも3割ほども値段が上がったように感じる昨今ですが、パイプコレクターの皆様はいかがお過ごしでしょうか。もはや我々は1ドル=70円台だった世界とは別の世界に生きているといっても過言ではありません。数年前の500ドルのパイプはもはや500ドルではない。何を言ってるのかわからねーと思うが。でもお目当てのパイプの値段を毎回計算機で円に変換しては「ウッソー」と叫んでいる方も多いのではないかと想像します。

というわけでいきなり金の話から始まりましたが、こんな世知辛い世の中じゃ600ドル、800ドルなどという立派なプライスタグを掲げるハイグレーダーのパイプ(今ついつい頭の中で円に変換してしまった人は正直に言いましょう)よりも、ついつい売出し中の若手作家の作品に目が向いてしまうのは致し方ないこと。しかしこちらのほうも掛け値なしにバリューが高いと思えるものはほとんど見つかりません。世界的なパイプスモーキングの盛り上がりとそれに伴うハンドメイド・パイプ需要の高まり(eBayでのビンテージ・パイプの相場も随分と騰がりました)もあって、若手パイプ作家といえどもなかなかのお値段をつけていることが多く、しかもその作りやシェイプには若干不安を感じさせるものが散見されたり、ひどい場合にはこの値付けはインチキじゃねーのと言いたくなるようなのが混ざってたりもします。

これじゃあ買えるパイプがねえじゃねえか。
円高時代にヘタに目を肥やしてしまったのが運のツキとも言えます。

…そんな厳しい状勢にも拘わらず、最近僕が立て続けにパイプを購入している作家さんがおります。
その人の名はライアン・エドワード・オールデン。アメリカはテキサス州ダラス在住の現在35歳、フルタイムの専業パイプ作家です。ブランド名としてはR.E.Alden Pipesとなります。まあ論より証拠と言いますので、僕の購入したオールデン・パイプを見ていただきましょう。

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最初にショップで見つけて購入したビリヤード。ステムは白アクリルでアフリカン・ブラックウッドのリングが入っているが、バレルタイプのスタウトなボウルに太目のシャンクでファット系ビリヤードお手本のようになっている。

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こちらはコミッションで作ってもらったロバット。ちょっとステムが長めではあるが、ファット気味なシャンクもあいまって非常にバランスのとれたロバットになっている。ブラストも最高。ちなみにライアンの作るアクリル・ステムは非常に出来がいいので、エボナイト派の僕には珍しくわざわざアクリルで作ってもらいました。

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こちらは届いたばかりのスタウト・ビリアード。全長10cm強のノーズウォーマーです。こんなにコンパクトなパイプでも、全体のバランスが崩れていないところに注目。

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リップボタンのアップ。こちらは旧仕様のボタンですが、容量は大きくVスロットも非常に長く取られています。ロバットようなショートステムの場合、煙道は全てフレアで占められるほど。

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ジャンクション部のアップ。高い精度が一目瞭然。エッジもビシッとしていて気持ちがいいです。

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サンドブラストのテクスチャ。ディープでクラッギーですが、変なわざとらしい人工的なグレインを強調していないのが僕の好みです。

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作家物にはきわめて珍しい、ジャンクションまで全部ブラストされているシャンクエンド。ライアンによれば、オールドダンヒルなどのビンテージ・パイプ・コレクターにアピールすることを狙っているそうです。

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ライアンの最新のカラースキームである『ブリンドルブラスト』。深みのあるレッド系ブラウンのステインに、カンバーランドステムの組み合わせ。非常に魅力的なフィニッシュ。

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こちらがライアン自慢の最新仕様のリップボタン。リップスロットの幅が増し、ハイグレーダーの多くが採用する形に近くなっています。もちろん非常に快適で、クレンチにもリップホールドにも両対応。

ご覧の通り。ライアン・オールデンの魅力は、1) 美しいクラシックシェイプ、2) トップクラスにクラッギーなブラスト、そして3) 入念に作り込まれたエンジニアリングサイドの三本柱です。

シェイプとブラストに関しては上の写真で十分に納得いただけるでしょう。ビリヤード・ボウルはカッコ良く作るのが最も難しい部類のボウルです。三本とも奇しくもビリヤード系のシェイプですから、クリーンなシェイプ感覚、それでいて味わいのある曲線の使い方など、オールデンのクラシックに関する造詣の深さが容易に見て取れると思います。

ブラストはアグレッシブで、しかも変に整ったグレインを強調しないナチュラルにクラッギーなタイプ。本人がブラストフィニッシュが大好きなせいか入念な仕上げで、業界でもトップクラスのブラストを行う作家の一人と言ってもさほど誇張ではないでしょう。

エンジニアリングに関しても非常に丁寧で、細部まで手の届いた仕事が印象的です。カッチリした危なげのないフィッティングに加え、エアフローの良さもリップの快適さも非常にレベルが高いです。

バリューとかお金の話でこの項を始めましたが、ここまでこの記事を読まれた方は僕が強調したいのはオールデン・パイプの値段ではなく、卓越したクオリティのほうだということにお気づきになられているでしょう。実際ただ単にお買い得だからという理由で、三本タテに同一ブランドのパイプを購入するほど僕は酔狂じゃあないのでござる。端的に言えば、ハイグレード・パイプの属性をことごとく備えていながら、ハイグレーダーの半分ほどの価格で買える驚異のブランド、それがライアン・オールデンのパイプなのです。

このあたり、いったい何がどうなっているのか、ライアンに直接チャットでインタビューしてみましたので以下の訳文をお楽しみください。

ライアン・オールデン インタビュー

――oldbriars:まず自己紹介をお願いします。パイプメイキングに足を踏み入れるきっかけはなんでした?また、パイプ製作は誰に習いました?

ライアン・オールデン(以下R):僕の家には小さいころからずっと作業場があってね、親父は暇なときはいつもそこでちょっとした家具、机とか本棚とか額縁なんかを作ってたんだ。だから僕は工具と木工に囲まれて育ったってことになるね。18の時にパイプスモーキングを始めて、それ以来ずっとパイプが大好きだし魅了され続けてる。パイプスモーキングの歴史とか逸話はいつだって僕の興味をそそるものだったんだ。
32歳のときに職を失って、これからは上司の機嫌が悪い日にクビになりやしないかヒヤヒヤするようなことがない、何か自分ひとりでできる仕事をやろうって決めたとき、パイプを作ることを試してみてもいいんじゃないかって思ったんだよ。僕は何年もずっと、古いパイプを買ってはレストアしていたからね。それで大型トレーラー(日本では何ていうのかな?アメリカじゃ18ホイーラーとかローリーズって呼ばれてるでっかいやつだよ!)の運転手をしながら、自分の時間はすべてパイプ製作に関して手に入るあらゆる情報を集めることに費やしたんだ。

一年間調べられることはすべて調べ尽してから、僕は一本目のパイプを作った。そしてそのパイプを持ってシカゴショーに行ってみたんだ。そこで僕が出会ったのはラッド・デイヴィスをはじめとする数々の偉大なパイプ作家たちだった。特にラッド・デイヴィスは僕のパイプを気に入ってくれて、ショーの間いろんな人々に僕のパイプを見せて回ってくれた。ショーが終わっても僕はラッドと頻繁に電話のやりとりを続けて、色々難しいポイントについて質問をしたりした。彼は僕がパイプ製作一年目に訪れるさまざまな障害を克服するのを手伝ってくれたんだよ!

次の年のシカゴショーでは、プリマル・チェダに話しかけてみたんだ。それ以来、プリマルは僕にとって友人であり先生でありそれ以上の…兄貴のような存在になったんだ。彼は毎年僕を一週間ほど自分のワークショップに招待してくれてね。プリマル本人やビル・シャロスキー、そして<スモーカーズ・ヘイヴン>に立ち寄る才能あふれるパイプ作家たちに交じってパイプ製作することは、他の何物にも比べられないほど大きな影響を僕に与えたんだ。僕のパイプの構造やドリルのやり方の基準は、プリマル・チェダが高品質なパイプに求める厳しい基準そのままのものなんだよ。

プリマルとビルと過ごした時間以外では、ブルース・ウィーヴァーの作業場で何日か過ごしたこともある。それと、僕と同じくテキサスに住んでるマイク・ビュテラ(!)からもいろいろな知識を教えてもらったことがあるよ!

――oldbriars:Alden Pipesのアルバムを見るとクラシックシェイプが大半を占めていますが、クラシックシェイプは好きですか?また、ブロウフィッシュとかピックアックスのようなよりファンシーなシェイプを作る予定はありますか?

R:僕はクラシックシェイプの単純さが大好きなんだ。完成したカタチと完成した機能がひとつの美しいオブジェの中にきっちりと納まっているのを見るのはとても楽しい。
もちろんアーティスティックな観点からカタチを作り出しているモダン・シェイプも大好きだよ。僕は段階的にシェイプの幅を広げていこうと思っている。僕はこれまで、ひとつひとつシェイプが備える構造をマスターしてからそのシェイプをモノにしていく、ということに注力してきたんだ。僕のパイプはどのパイプだってまず喫煙の道具であることが優先されるのさ。美しさはその後の話だ。<世界で最も美しいけれど煙道が狭すぎるバレリーナ・シェイプ>なんて、僕には意味がないものに思えてしょうがないんだよ!

<道具としての側面が優先>のちょっとした例だけど、僕は以前も良いリップボタンを作ってきたと思う。高さが高すぎず、長さが短すぎず、形がよく、さっとに唇になじむやつをね。でも僕はもっと完璧でベストなボタンを作りたかったんだ。だから僕はリップボタンを、今の僕の目に完璧だと思える形に変化させた。リップボタンなんてパイプ全体からみればほんの小さなパーツだけれど、それでも最も重要なポイントのひとつなんだ。ぼくがここ数年集中していたことはパイプの細部を完璧にすることだった。今はもうすごく満足のいくリップボタンが作れるようになったから、これからはシンプルなビリヤードからアシンメトリックなブロウフィッシュまで、僕が作るどんなパイプも研究の成果の恩恵を受けることができると思うよ。

こういった細部に関することには自分でも満足できるようになったから、そろそろ新しいシェイプをお見せすることができるんじゃないかな。

――oldbriars:個人的には、Alden Pipesの値付けは品質に比べてちょっと安すぎる気がします。こんなお手頃な値段をつけている理由があれば聞かせてください。

R:価格を上げていくのはできるだけゆっくりとやっていこうと思ってるんだ。僕は自分のパイプが<悪くない値段>であって欲しいんだよ。僕はこの点こそラッド・デイヴィスが素晴らしい成功を収めた秘訣だと思うんだよね。彼の作るパイプはいつでも彼が設定する価格以上の価値があったじゃない? ああいうのが僕の理想なんだ。僕が自分のパイプにどんな値段をつけようとも、いつだってそのパイプには必ず価格以上の価値がある、っていうね。

それと、僕はとってもいいお客に恵まれてるせいで価格を低く抑えられてるってところもある。僕はほとんどのパイプを直接お客に売ることができてる。これって言うほど簡単なことじゃなくって、写真を撮ったりメールに返信したりと余計な手間もかかるんだけれど、でも僕はお客と直接話をしてお客のことを知るのが大好きだから、そこは問題にはならないんだ。間に小売店が入ってマージンを取られることがないから、これまで価格を低く抑えることができてる。こういった感じで商売が続けられてるかぎり、僕のパイプはこれからもずっと<悪くない値段>だと思うよ!

――oldbriars: Alden Pipesの内部エンジニアリングは非常に素晴らしいものですが、良いパイプを作るために最も重要視していることはなんですか?

R:一番手間がかかるのはステムの内部の諸々、特にリップ手前1インチは一番重要な箇所だけど、でもパーフェクトな喫煙体験のためには煙道の端から端まで全てがきちんとしてる必要があるんだ。ことエンジニアリングに関しては、どの点もおろそかにしたりサボったりすることはできない。どのパイプの極小ディティールも完璧じゃなきゃダメで、例外なんてものはない。そして僕が苦心してるのはまさにそこなんだよ。

oldbriars: Alden Pipesはサンドブラスト・フィニッシュの良さで知られていますが、あなた自身もスムースパイプよりサンドブラストのほうが好きなんですか?

R:うん、僕はブラストのほうが好きだ。自分ではほとんどスムースパイプって買ったことがないんだよ。僕は自分のオウンパイプの扱いが雑だから、あんまり手入れが必要になる仕上げは向いてないんだよね(笑)。去年一年間、あんまりスムースパイプは作れなかったけれど、これからはもうちょっとスムースを増やせたらと思うよ。

――oldbriars:最後に、日本のパイプスモーカーにメッセージがあればお聞かせください。

R:もちろんあるよ!これまで僕のパイプを買ってくれた人には、コレクションに僕のパイプを加えてくれて有難う、って言いたい。日本のパイプスモーカーのみなさんは品質にとても敏感だよね。どれだけ有名かとか、高い値札がついてるかとかじゃなくって、その作品の本質を見てるんだ。これまで知り合いになれた人達に会いに、いつか日本に行けたらと思うよ。

そしてもうひとつ、僕のところには英語ができなくても気軽にメールして欲しいんだ。日本語メールでかまわない。Google翻訳だけじゃ厳しいかもしれないけれど、もしお互い話が通じなかったら、誰か翻訳できる人間を連れてくるからさ!

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ライアン・オールデン。

どうでしょう。名は体を表すと申しましょうか、ライアンのパイプは彼の言葉の簡潔な証明となっており、また彼の言葉は彼のパイプのなりたちの確かな裏付けになっていると思います。すなわち、

  • ・プロ作家になるという明確な目標をもってパイプ製作に取り組んでおり、そのために必要なことを貪欲に取り入れる姿勢がある
  • ・美しさより道具であるということを優先し、細部を最も重要だと考える製作思想
  • ・まず自分の作れるシェイプから、ひとつひとつ完璧さを目指すという堅実性
  • ・ラッド・デイヴィス、プリマル・チェダといった(やはり)華美さより道具としての完成度を優先する導き手の存在

まさに彼は自分の思い描くパイプを作っていることが、上記のパイプの写真からも解るのではないでしょうか。
大して更新もしないブログ(←ごめんなさい)でわざわざ1エントリを設けて紹介してることからも分かるように、ビル・シャロスキーがなかなかパイプを作れない状況にある現在、ライアン・オールデンは僕(oldbriars)のイチ押しのパイプ作家です。彼のインタビューにもあったように英語が苦手な人でも注文は大歓迎。サイトにはある程度吊るしのパイプもアップされていますが、細かな注文まで引き受けてくれるコミッション・スタイルでの受注がメインとなると思います。(支払いにはPayPalが簡単ですが、郵便為替、国際口座振込なども応相談でOKとのこと)納期も今のところそれほど長くはかからないと思います。

  • 価格(あくまで傾向ですので、正確には本人に見積をとってもらってください)
  • サンドブラスト、クラシックシェイプ 約270ドル~350ドル
  • サンドブラスト、スペシャルシェイプ 約400ドル~
  • スムース、クラシックシェイプ 約380ドル~

ライアンのウェブサイトはこちら
http://www.aldenpipes.com/

facebookのアカウントがあればさらにやりとりが簡単になるでしょう
https://www.facebook.com/ryanealden

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サドルステムの部位名称について

6月 8th, 2015

最近パイプメイキングをたしなむ友人・知人が増えてきました。そのことに関しては別に記事を立てるつもりですが、今日はそんな彼らとやりとりをしていて気づいた小ネタというか、提言というか。

それはサドルビット、サドルステムに関してです。このサドルという語、普通に訳すと馬の鞍、ということになるのでしょうが、馬のサドルにサドルステムとの形状の類似が見られないことから、おそらく自転車のサドル(シートというのが一般的らしい)のほうだと思います。このマウスピースから余計な部分をカットしたカタチを、自転車のサドルを上から見た姿になぞらえたものなのでしょう。

ところが、前述のパイプメイカーの方々と話しているうちに、このサドルステムの形状を云々するのに非常に不便を感じました。マウスピースはテーパードが普通で、部位の用語も(一応)揃っているのですが、サドルステムに関してはこの特異な形状の各部位を指す用語がないのです。英語圏の文献やネットでの会話も漁ってみましたが、サドルステム独自の部位名称というのは定まってないようです。

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というわけで、図をごらんになっていただければ一目瞭然ですが、サドルステムを剣に見立てて、「ヒルト(柄)」「ブレード(刃)」「フランジ(鍔)」という語を使ってみてはどうかな、というお話です。よりスペシフィックには、「サドル・ヒルト」、「サドル・ブレード」、「サドル・フランジ」と言えば間違いが少ないのではないかと思います。…これは僕の独創というか、勝手にこう呼んだら便利じゃないの、という話ですので、どこかに典拠とか根拠とかがあるわけではありません。ただ必要とされるパイプメーカーとか、コレクターの間で便利に使っていただければ、ということに過ぎませんので悪しからず。

サドルステムにも、結構メーカーや作家での個性があるもので、たとえば一番分かりやすい例だと、Barlingにはたまに、Barlingクロスが打てないくらいに極端なショートヒルト(そう!こうやってスマートにあの部位を指示することができるのですよ!快感!!)のサドルビットがあります。ダンヒルは少なくとも1970年以前は、テーパーステムがメインのファクトリーで、サドルステムはモディファイヤ<6>のスタンプがついたテーパーステム・シェイプのバリエーションである、という位置づけでした。そのモディファイドなサドルステムはこれまたBarlingとは対照的に極端なロングヒルトで、独特の風格があります。作家さんと話していると、このサドル・ヒルトの切り方でずいぶんとシェイプの印象も変わってくるという話でした。このあたり、ここで提示された用語を使ってガンガン議論していけば、サドルステムの美の規範(ノルマ)などもできあがってくるのかもしれません。その一助までにこのエントリを書きました。

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琉球黒檀製タンパー

8月 2nd, 2014

沖縄黒檀タンパー

琉球黒檀製タンパー。下はアンボイナ・バール製シャロスキー・タンパー

先日Ye Olde Briarsの読者を名乗る方から一通のメールを頂きました。

以前サイトでグループオーダーしたビル・シャロスキーのカスタム・タンパーに関して、また発注する機会があったら是非とも参加したいという内容でしたが、ご存知の通りシャロスキーは目下ウン十本というコミッションを抱えて青息吐息の状態。たとえタンパーであってもこれ以上のオーダーはちょっと無理、という状況でしたので、そのときには現在追加発注の予定はない旨を返答しました。

しかし、せっかくサイトまでご連絡を頂いたのにありませんできませんと答えるだけなのも芸のない話です。もともとシャロスキー・タンパーのデザインをしたのは僕自身だったこともあり、シャロスキーのところでの製作は無理だが詳細な図面を提供するので、もし木工職人に心当たりがあればそちらに持ち込んでみてはいかが、とその読者の方には提案しておきました。

沖縄黒檀タンパー

落ち着いたたたずまい。

数週間後、僕の手元には写真の美しい黒檀製タンパーが届いていました。件の読者、W氏がご親切にも僕にも一本分けて下さったものです。W氏は沖縄在住のパイプスモーカーで、タンパーの図面を受け取るやすぐさま地元沖縄の木工工房を訪れ、こういった喫煙具の製作は可能か訊ねると同時に近傍の琉球三味線の工房で材料となった貴重な《琉球黒檀》の端材まで譲り受けていたというのですからその熱意には頭が下がります。

さてこの琉球黒檀タンパー、デザインについて触れると自画自賛になるのでやめておきますが、じつに素晴らしい出来です。製作を担当した沖縄の木工工房”crafty dove gallery”の亀井氏は「私の腕ではこれが限界」と仰ったそうですがなんのなんの。細部まで細かく作り込まれ、しばしばこのデザインで問題となったブレード部分の強度もしっかり確保してあります。《琉球黒檀》はとても目の詰まった硬い木で、僕の手持ちのアンボイナ・バール製のシャロスキー・タンパーよりもずっしりと重みがあります。デザインを提供したとはいえこのような良いものを頂いてしまい、W氏には再度お礼を申し上げたいと思います。

沖縄黒檀タンパー

細部は亀井氏の技が光る

単なる頂き物自慢のようになってしまったエントリですが、カスタム・タンパーに興味があるかたは沖縄県の木工工房 “crafty dove gallery”にコンタクトをとってみてはどうでしょうか。琉球黒檀は希少な素材のため、同じ素材での製作は難しいと思いますが、他の材を使ったものならばカスタムオーダーも可能なんじゃないかと思います。

crafty dove  gallery(クラフティー ダヴ ギャラリー)紹介
http://www.kahu.jp/life/gallery/20140417/index.jsp

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パイプフェスタin府中 2014

1月 9th, 2014

今年も2月16日(日)に、東京都府中においてパイプフェスタが開催されます。

パイプフェスタin府中 特設ページ

僕もYe Olde Briarsのブースを出展します。出展内容は、今年は大量のパイプを持っていくのはちょっと億劫なので、Comoy’sのExtraordinaireシリーズを展示しようかと考えています。

それに加え、このblogではおなじみのイギリスのブティック・タバコブレンダー、GQ Tobaccosを紹介いたします。GQのブレンドを皆さんにお試し頂けるよう何種類か展示する予定です。

近隣にお住まいのパイプスモーカーの方々のご来場をお待ちしております。

 

※なお、パイプフェスタin府中は入場者の入場料はおろか、ブースを出す出展者(プロ含む)の出店料も無料の、まさにスモーカーによるスモーカーのための素晴らしいイベントです。会場では運営資金への寄付を募っていますので、懐に余裕のある方(特に何万円もするハンドメイド・パイプを年に何本も買うリッチな方々!)は是非ご協力ください。僕はパイプフェスタの運営には関わっておりませんが、一人の自由を愛するスモーカーとしてYe Olde Briarsの読者の方々にご協力をお願い致します。尚、運営者のお一人臥煙堂さんによれば『企業様による協賛金などは大歓迎』とのことです(笑)

イギリスのパウチ物パイプタバコはあなどれない

12月 4th, 2013

ここ数年『グランド・オリエンタル』シリーズから『マチュアード・バージニア』シリーズ(茶色缶)、そしてある種究極の常喫用オリエンタル・ブレンドとも言える『オリエンタル・ミクスチャー』シリーズ(緑缶)を経て、<アメリカのクラフト・タバコの祖にして雄であるマクレーランドこそ究極の趣味的パイプタバコ・ブランド>という考えに落ち着いていたoldbriarsですが、最近になってちょっと風向きが変わってきました。

きっかけは最近お会いすることが多いきむぞうさん(http://ameblo.jp/kimuzo777/)より頂いた、ビンテージ缶のSt. Brunoで、これを吸ってみたところ「イギリスにもこんな深い味わいのバージニア・タバコがあるのか!」と目から鱗状態でした。ことバージニアに関してはサミュエル・ガーウィズの二大人気ブレンド(Full Virginia FlakeとBest Brown Flake)が個人的にあまりパッとせず(美味いことは美味いんですが…)、もうひとつの有名ブランド・ラットレーズのブレンドがどれも肌に合わなかった(ドイツ・コールハス製のタバコの独特の白粉臭?がダメ)ので、「英国タバコには大したバージニアブレンドがない」という固定観念にとらわれてしまっていたのですが、St.Brunoはそんな僕の蒙を啓いてくれたのです。St.Bruno自体は日本にもつい最近まで入ってきていたので、灯台下暗しといえばそうなのですが、創業時のマクレーランドが復刻を目指したという<古きよき英国産のバージニアブレンド>とは、実のところこのあたりのタバコのことを指していたのではないかと思うに至りました。

個人的にパウチ入りのタバコは安物の着香煙草ばかり、というイメージがあり、ガチの着香煙草が苦手な僕はパウチ入りたばこに変な先入観を持って遠ざけていたというフシもありました。慌てた僕は、
『―これはいけない、こんな美味いタバコがパウチという最も簡便なパッケージで売られているのは、イギリスのごく普通のスモーカーの味覚レベルというものはやはり尋常なものではなかったのだ、いや最もポピュラーで最も簡便であるからこそ、彼の国では最も優れた製品が要求されるのだ。イギリス侮りがたし。アメリカの趣味人の教養や熱意にはこのoldbriars、敬意を素直に表するが、それと同等の熱情がごく一般的な大衆の中に自然体で存在する英国こそやはりパイプスモーキングの本場であったか』
などとブツブツと考え、当然の仕儀としてイギリスのパウチ物パイプタバコをしこたま買い込むことと相成りました。

Manchester Tobacco “Revor Plug” (Gawith Hoggarth production)

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Revor Plug 50gパウチ入り。イギリスのショップでは10英ポンド前後で販売されている

GQ Tobaccosのウェブショップでまず僕の目を引いたのがこのRevor Plugです。本当に地味な、なんの変哲もないどうでもいいデザインのクリーム色のパッケージ。ただ僕が注視したのは、このタバコが現在は僕が絶大な信頼を置いている英国・ケンダルのガーウィス・ホガース社の生産になっているということでした。調べたところによるとこのRevorは英国中部の都市マンチェスターに存在したマンチェスター・タバコという会社のブランドで、会社は1990年代に日本のJTに買収されたあとに工場は閉鎖され、レシピがガーウィス・ホガースの手に渡っていまだに生産が続けられているようです。GQ Tobaccoの説明に従えばバージニア+ケンタッキーの葉組みに<レイクランド香>でわずかに着香されているそうで、グリン君の言によれば「地味~なタバコで英国でもそんなに出るタバコじゃないよ」とのことでした。

いざ現物が届いて吸ってみると、これが大・大・大・の大当たり!いままで体験したことのない味わいの素晴らしいタバコでした。馬鹿な表現ですが、素晴らしく甘く、素晴らしく深いだけでなく、フルーティで花の香りのレイクランド香の中毒性があり、まごうことなきガーウィス・ホガースのバージニアタバコと同じ深いハービーな熟成感と、そしてボトムには同社の一部のロープタバコに存在するオイリーさまでが存在しているのです。まさに上から下への味覚の饗宴で、『この味がこんなにも地味で安っぽいデザインのパウチの中に詰まっているのか!』とすっかり腰を抜かしてしまった僕は、上に記したイギリスのパウチタバコに対する疑惑(?)を確信に変えるにいたりました。イギリスのパウチ物はヤバイ。

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その名の通りプラグ形態。カットするにはナイフ等が必要だが、それほどプレスはガチガチというわけでもないので葉を剥がすようにして手でほぐすこともできる。このプラグの美しい光沢と漂うレイクランドの香りがまた味覚を駆り立てる

Ogden Walnut Flake (Orlik production)

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Ogden Walnut 50gパウチ入り。こちらは英国らしい歴史を感じさせるデザイン。イギリスのショップでは12英ポンド前後で販売されている

次に試したのがこのOgden Walnut。Ogdenは英国リバプールに存在していた会社で、St.BrunoもこのOgdenの銘柄でした。ビンテージパイプ・コレクターの方々にはあのBarlingを買収した会社として聞き覚えがあるんじゃないかと思います。そのOgdenもImperial Tobacco傘下となり、1990年代までリバプールのファクトリーでの生産が続けられましたが、2007年に工場は閉鎖し、St.BrunoやこのWalnutの生産はデンマークのオーリック社に移っています。

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パウチを開封すると、このようなカレールー(笑)を思わせる容器に封入されている。密閉度は高くパウチ形式で弱点となる長期間の保存も問題なさそう。

St.Brunoと同じ会社の銘柄ということで期待しながら吸ったのですが、このWalnutも素晴らしいタバコでした。僕の大好きなマクレーランド MV No.27を彷彿とさせるような、深く熟成したバージニアタバコですが、St.Brunoほど強いタバコではなく、もう少し気軽に吸える感じではあります。

僕は現行のオーリック製のダンヒルタバコが大嫌いで、My Mixture 965などは生産がOrlikに移ってから吸ったのち、二度と買うもんかと誓ったくらいだったので、オーリック社の生産であることに一抹の不安を覚えなくもなかったのですが、St.BrunoとこのWalnutはまるで別の会社が製造しているのではないかと思えるくらい美味しいタバコです。

結論として、イギリスのパウチ物パイプタバコには素晴らしい銘柄、それもちょっと他では見つからないような独自性と、年月に研磨された洗練が両立した銘柄があるのだと言わざるを得ません。他にも有名な銘柄がまだいくつかあるので、これから順次試していきたいと思っております。また、英国から買い付けることになるので価格は米国タバコや米国流通のイギリス製タバコよりも若干(というよりかなり)高めになります。このエントリを読んで購入される方はご利用は計画的に(笑)。英国タバコの購入には先日エントリで紹介したGQ Tobaccosが便利です。

revor plug

revorがあまりにも美味かったので調子に乗って追加購入。積めば積むほど心が豊かになるタバコ。

追記:Revor Plug を製造していたManchester Tobaccoという会社について調べてみたんですが、情報がほとんどありませんでした。分かったのはどうやらManchester TobaccoというのはイギリスCWS(共同卸売協会:生協のような組織)の煙草生産部門のようなものだったらしく、マンチェスターのルードゲイト・ヒルにはまだ当時のままのファクトリーの建物がそのまま残っています。ルードゲイト・ヒルの工場は1995年にトラッフォードに建てられた新工場によってとって替わられますが、オーナーであるJT(日本たばこ)の決定によりマンチェスター・タバコは売却が決定し、この新工場も2007年2月に閉鎖されています。こちらの建物は現在はEventCityというエギジビション・センターとなっています。CWSではRevor PlugのほかにMahogany Ready Rubbed、Centurion Mixture、Fulvous Mixture、Beechwood Cut Plugなどという銘柄を製造していたようです。往時の工場内の写真。

ブティック・タバコニストという選択

11月 17th, 2013

店内にずらりと並べられたブレンド用タバコのジャー。お客は自分の好みをブレンダーに伝え、その場で自分専用のブレンドを作ってもらう。出来のいいブレンドには番号が振られ、他人のブレンドを注文することも可能―こんなスタイルでパイプ煙草を供給するスタイルのタバコニストは、1980年頃までのイギリスでは珍しいものではありませんでした。かつてアルフレッド・ダンヒルの<消費材であるタバコを嗜好品にする>という思想のもとに始められたものですが、ロンドンのダンヒル本店でもこういったサービスをやらなくなって久しい時間が流れています。イギリス国内でもオリジナル・ブレンドを置いているタバコ店は非常に少なくなってしまいました。

GQ Tobaccos by Glynn Quelch

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そんな淋しい風潮のなか、イングランド中部の街ノッティンガムで、新たにインターネットベースのタバコニストを開業したパイプ煙草ブレンダーがいます。グリン・クェルチ(Glynn Quelch)君30歳。地元ノッティンガムのタバコニスト、『ゴントレーズ』で9年間タバコブレンディングの技を磨いたあと、今年からノッティンガム郊外の自宅でタバコニストを起業しました。それがこの項で紹介するGQ Tobaccos(http://www.gqtobaccos.com/)です。

「何故独立したかって?僕はタバコを使って色んなブレンドを作ってみたかった。実験的なやつもね。新しい何かを作るのが僕の長い間の夢だったのさ。だけど店のオーナーは僕にそんな贅沢を許してくれなかった。だから辞めたんだ。そのおかげで、僕はあそこ(ゴントレーズ)で作っていた僕の傑作ブレンドのいくつかを、もう自分で売ることはできなくなっちゃったけどね。今頃あのオーナーが地団駄踏んで悔しがってるといいなと思うし、そうなるようにGQ Tobaccoを盛り上げるつもりだよ。』とはグリン君の弁。

Glynn Quelch

グリン・クェルチ君30歳。タバコどんだけ好きなのとツッコミたくなる写真。

グリン君のブレンダーとしての腕は確かなもので、『ゴントレーズ』の人気オリジナル・ブレンドのいくつかはグリン君の手によるものだそうです。クラシックなブレンドだけでなく、野心的で実験的な、今まであまり見たことのない葉組のブレンドも手がけています。現在10種類ほどのオリジナル・ブレンドをウェブサイトにラインナップしていますが、グリン君は自らのブレンドを<ブティック・パイプタバコ>と名づけ、昔日のタバコニストのように顧客の好みに応じた完全カスタマー・オリジナルのブレンドを誂えることをプライドとしています。また、既存のオリジナル・ブレンドも、要望を伝えてもらえれば微妙にトゥウィーク(調整)したものを発送することもできるとのこと。実際にもイギリスのハンドメイドパイプ作家、クリス・アスクウィズや、とあるイギリスの政治家などのために特注のオウン・ブレンドをブレンドしているそうです。

この他にサミュエル・ガーウィズやガーウィズ・ホガースなどのブランドのパイプタバコや、前述したクリス・アスクウィズのハンドメイド・パイプを含むパイプ・パイプ用品も販売しています。特にパイプタバコは日本にはあまり輸入されなくなってしまったセント・ブルーノなどを含む、アメリカ経由では入手できないタバコもいくつか販売しています。英国国内の価格なのでアメリカ経由で買うより値段は高め(1.5倍程度)ですが、日本では馴染みのない銘柄やグリン君のオリジナル・ブレンドを購入するのに利用してみてはどうでしょうか。日本からはクレジットカードで支払いが可能です。

以下僕が試してみたGQ Tobaccosオリジナルブレンドに関していくつか短評を。

GQ Blends “Classic English”

–Virginia, Kentucky, Brown Cavendish, Kentucky, Latakia & Cigar Leaf
「クラシック」という名前とは裏腹に、グリン・クェルチのモダンな一面が表出されたブレンド。GQ Tobaccosではこのブレンドをイングリッシュ・ミクスチャのフラッグシップ・ブレンドと位置づけている。バージニアのフルーティさが強調された珍しいタイプのイングリッシュ・ミクスチャで、シガーリーフが味の複雑性に一役買っている。ラタキアはオーバーパワーではなく非常にスムースなブレンド。ガーウィズ・ホガースのBalkan Mixuture(缶入り)を彷彿とさせるがあれよりももっと複雑。

GQ Blends “Classic Balkan (Izmir)”

–Virginia, Kentucky, Turkish & Latakia
<バルカン>を名前に冠するパイプタバコは多いが、それらはその実ラタキアをフィーチャーしたヘビー・ラタキアブレンドが大半で、本物のバルカン・スタイルのブレンドは非常に数が限られている。こちらはClassic Englishとはうって変わってトラディショナルなバルカン・ブレンド。ラタキアのスモーキーさ、バージニアの甘さはどちらも控えめになっており、Izmir(オリエンタル葉の一種)のナッティな甘さが前面に押し出されている。抑制的でおだやかな味わいなので(バルカン・ソブラニがそうだったように)常喫にも向いている。もちろんソブラニの代替品としてもおすすめ。

GQ Blends “Swamp Flower”

–Virginia, Kentucky, Turkish & Perique
グリン・クェルチ流VaPer(バージニア+ペリク)。ペリクは柑橘感を出すよりもブレンド全体のコク・深みを出すために作用しているが酸味も十分。Gawith Hoggarthのロープ系煙草をベースに使用していると思われるが、そのためもあってか非常な熟成感とリフレッシュ感のある酸味を同時に味わうことができる。オリエンタルとケンタッキーも少量ブレンドされているため、VaPerとしての純度は他のブレンドに譲るが、その代わりに蟲惑的といってもいいような複雑さを実現している。Peter HeinrichsのCurlyが好きな人や、現行のスリーナンズには熟成感が足りない、と思っているスモーカーにはうってつけ。個人的にはベストVaPer3指に入るブレンド。かなり強い煙草なのでニコチン酔いには注意。oldbriarsのおススメ銘柄です。

GQ Blends “Sugar & Spice”

–Virginia, Black Cavendish & Turkish
グリン・クェルチの冒険心がフィーチャーされたアロマティック。ブレンダーはあまりアロマティックを好まないそうで、「着香煙草が嫌いなスモーカーでも常喫できるアロマティック・ブレンドは可能か」がテーマだそう。オリエンタル葉(Izmir)がブレンドのベース煙草となっている極めて珍しいブレンド。イズミルのナッティなスパイシーさが”Spice”、甘くて美味しそうなナツメグ・シナモンの香りが”Sugar”ということなのだろう。オリエンタル好きなら一度はトライしてもらいたい野心的なブレンド。

下の動画は新作”BurPer Kake”の製作過程の模様。ハンドブレンド&ハウスプレス!!

 

追記。GQ Tobaccosで売られているJ.F.Germainの”Rich Dark Flake”はEsoterica “Stonehaven”のイギリス国内流通バージョンだそうです。僕も吸ってみましたがおだやかで極めてリッチ、ちょっとだけチョコレートっぽいノートが感じられる素晴らしいバージニアフレイクでした。Esotericaの煙草はひどい品薄状態が長く続いているので、少々値は張りますがStonehavenのファンの方はイギリス経由での購入もアリかと思います。

追記2。GQ Blendsを吸ってみた方の感想(随時追加していくかも。)

@mortalizさん
-GQ Blend Classic Balkan
「GQ Classic Balkan 金のゆるす限り買いたい。」「キック強力。ニコチンも似た構成のブレンドと比べて格段に強いが、味が素晴らしい。まじで親密さの中で世界が止まる。時間が空間になる。とにかく凄いよ!GQ Classic Balkan」「昨日のチェダ、今日のES(編注:ビル・シャロスキー作 Eye Scorcher)と、二回続けて喫煙体験として素晴らしいです。ヘヴンです。超気に入りました。」

杜塚さん
-GQ Blend Classic English
「GQ Classic English はきわめて複雑なブレンドだと思う。かなり強烈なスパイシー、スモーキーな喫味、甘味、清涼感、後を引く煙草感、ナッツやシナモンのニュアンス、などなどが絡み合い、吸うたびに味が変わるように感じられるほど。そして、どの瞬間も文句なく美味い。」「ただ、流して吸うと、その複雑さの奥から湧き出てくる美味さに気づきにくいかもしれない。一定の集中というか、吸ってる人間の側から積極的に煙草に対してアプローチすることが求められる、という意味でGLPのブレンドに近いように感じる。」
-GQ Blend Sugar & Spice
「GBD Pedigree 1451 で GQ Sugar & Spice」「アンフォーラにも似た穏やかな着香と甘さがまず最初に来て、その背後には山椒を思わせるようなピリッとした風味がある。そして、中盤から終わりにかけてスパイシーさが高まっていく、といった具合。まさにシュガー&スパイス。着香の塩梅は絶妙で、ド着香でも微着香でもない。」「ハードコアなアンチ着香スモーカーのための着香煙草、との説明通りのブツでした。これも実に美味い。分かりやすさと適度な軽さ、味の変化があって、こういうのを常喫用というんだろうなあ、という感じ。それにしても、GQの使うオリエントは相当スパイシーだなあ、という印象を受ける。」
-GQ Blend Classic Balkan
「GQ Classic Balkan が届いたので吸う。これは、パイプ煙草はどのようにあるべきか、という問いに対する解答の一つになりうるブレンドだと思います。」「GQ Classic Balkan はマクレー緑缶8番にラタキアを積み増した、といった印象。オリエントのスパイシーな甘味とエキゾチックな香りが前面に出ていて、その裏にラタキアの薫香が消えたり現れたりする。Classic English と対照的にシンプルで、ディープ。」「ヘヴィではなく、むしろ軽やかな煙草だと思う。なので本読んだり音楽聴いたりする妨げに全然ならない一方で、味と香りに意識を向けると果てしなくディープというかドープなところに意識がずるずると滑り落ちて行くような感じもする。嗜好品としての煙草の美味さと危険さが凝縮されている。」

@satoh_toshiさん
-GQ Blend Classic English
「今、Classic English を吸ってるんですが、序盤はシガーリーフの味(ナッティー?)が特徴的で、中盤では、フルーティーが前に来たり、混ざり合ったり、美味しいですね〜^ ^」「自分は、最初「何か違う」と感じて、obさんのブログを読み直して、納得しながら、ニヤニヤしながら吸ってます^ ^」「自分のような、初級者でも、「ブレンドの妙」を素直に感じられるってのは、ありがたいタバコですね^ ^ 是非お試し下さいませ。」

パイプの挙動

6月 24th, 2013

「技術」とか「パイプの扱い」とか言うことがよく言われるパイプスモーキングですが、その割にはその技術とは何か、を書いてあるものがあまりにも少ない。自転車の乗り方と同じで、習うより慣れろ式というか、これが初習者を(そしてもっとキャリアの長いスモーカーをも!)混乱させる原因となっている気がします。

以前にも書きましたが、つまるところパイプスモーキングとは細かな物理現象の集まりに過ぎません。確かに色々な要素が絡んでくるし、スモーカー個人個人にも個性があるため、一概に<これが上手く吸うための方法だ>と言うことはできませんが、その手がかりとなるようなパイプの基本的な挙動についていくつか書いて置こうかと思います。

1.パイプ喫煙の基本

その前にパイプ内の煙草が何故燃えるかを考えて見ましょう。

パイプ内での燃焼のしくみ

パイプの内部で煙草葉が燃える条件とは、

  • ・燃焼に十分な酸素が供給される
  • ・火種となっている葉が燃え尽きたとき、隣接する葉に火が燃え移るだけの密度が確保されている

単純に思えるかもしれませんが、実は煙草葉がちゃんと燃える条件とはこの二つだけです。逆に言えば、この二つの条件のどちらかが停止すると、煙草の火は消えます。

パイプ喫煙のパラメータ

a)の条件を満たすために、スモーカーがパイプに入力することのできるパラメータのことです。これは基本的には、

  • ・<ボウル内の煙草の密度>
  • ・<ドロー(吸気)の強さ>
  • ・<ドローする間隔>

の三つしかありません。とかく神秘的に語られがちなパイプ喫煙ですが、その変数はこの三つに集約することが可能です。この三つを適切にバランスさせたときに理想的なパイプ喫煙ができるわけです。『パイプを上手く吸え!』と言われてもどうすればいいか皆目見当がつきませんが、この三つのパラメータを適切に維持しなさい、と言われればなんとなくできそうな気がしてきませんか?自分の喫煙スタイルを見直すときに、この三つのパラメータを念頭に置くことによって問題の切り分けが格段に簡単になります。

2.パイプがスモーカーに伝えるインフォメーション

ジュース

パイプ喫煙の敵とも言われるジュース。パイプスモーカーにとっては鬼門であり忌避されるこの現象ですが、はたしてあなたがジュースと呼んでいるものは本当にジュースでしょうか。一般にジュースと呼ばれるものは、次の三つに分類できます。

  1. シャンク内、ジャンクション部で発生する水分。これはジャンクション部で空気が乱流を起こすことが原因。ガーグリングの原因にもなり不快だが、主にパイプの作りが悪いために起こるもので、厳密にはジュースとは言いがたい。
  2. 唾液の逆流。これもジュースとは言いがたいもの。
  3. ボウルの下部で発生し、煙草を濡らす水分。これが本来の意味でのジュースである。原因は火種で暖められた煙がストリームとなって煙草葉の堆積を通過する際に、過度の抵抗によって持っている水分を葉に付着させてしまうことによって生じる。最初に生じたジュースが煙草葉を湿らせると、さらに抵抗が増してジュースが発生する条件を強固なものにしてしまうため、一度水分を生じさせると加速度的に喫煙が困難になっていく(つまり発生させないことが大事)。1.2に関しては喫煙方法というよりも、パイプの作りを見直したり、唾液をきちんと処理する習慣を身に着ければ解決する問題ですが、この真の意味でのジュースに対処するにはパイプに入力するパラメータを考慮しなおす必要があります。

片燃え

片燃えとは煙草が均一に燃焼するのではなく、ボウルのある特定の部分だけ燃えていく現象ですが、この片燃えにも種類があり、原因も対処方法も全く異なります。

  1. 片燃え:ボウル内の煙草表面の、周辺部の一点だけが燃え進んでいく現象。これは主に煙草の詰め方が緩すぎる場合に発生する。
  2. 煙突燃え:ボウル内の煙草表面の中心だけがズブズブと燃えていき、周辺部が燃え残る現象。これは主に煙草の詰め方が固すぎる場合に発生する。

フレームアウト

煙草の火が消えてしまうことです。これはスロースモーキングの観点から必ずしも悪いこととは言えないのですが、火種を維持し喫煙を継続しようとしているのに火が消えてしまう場合は、どこかに問題があるはずです。

  1. 煙草の詰め方が緩すぎてフレームアウト:煙草の詰め方が緩すぎ、火種の火が次の煙草葉に燃え移ることができないために火が消える。適切な固さで詰めていても、ボウルが進む内に密度が疎になって生じることもある。タンピングで解決できる。
  2. 煙草の詰め方が固すぎてフレームアウト:煙草の詰め方が固すぎ、ボウル内煙草葉の堆積に空気が通らなくなって酸欠を起こして火が消える。ドローの量と回数を増加することで解決するが、あまりにドローを強くしすぎるとストリームの抵抗が増してジュースの可能性が増大する。ピックを使うか、最初から煙草の葉を詰めすぎないことで解決する。

以上基本的なパイプの挙動を書いてみました。ここでは仔細なテクニックに関しては触れませんが、パイプの挙動を正確に判断することで問題の解決は容易になっていきます。自分自身のパイプスモーキングを見直す際の参考になると思います。

アクセサリ

最高のパイプライター

6月 15th, 2013

よいパイプライターを探すのは結構大変なものです。なぜなら一瞬で火が着くシガレット、着火に時間はかかるものの、一度着けてしまえば1時間は優に楽しめるシガーと違って、パイプライターに課せられるタスクは非常にシビアだから。パイプスモーキングに於いては比較的着火時間が長く、しかも頻繁な着火が要求されます。その炎の質も、パイプのリムを傷めないよう柔らかいものである必要があり、またその使用回数からできるだけランニングコストが安く、タッチも軽く、取り回しのよいものが求められます。これらの項目を高いレベルで満たすライターはそれほど多くはないからです。

パイプスモーカーに人気の定番ライターというものがあります。国産ライターの雄、イム・コロナ・ブランドの<オールドボーイ>。このライターは海外での評価も高く、パイプ関連フォーラムでパイプライターの話になると真っ先に名前が挙がる人気ライターで、自然、海外ショップでも取り扱っている所が非常に多い。他にもサロメのPSD-12や、最近パイプライターに力を入れている坪田パールの<エディ><ボルボ>といったパイプライターも、国内のパイプスモーカーの間では使い勝手が良いと評判です。これらはどれも1920年代に製作されたダンヒル・ユニーク(オリジナルのユニークはオイルライター)の構造を模したリフトアームと呼ばれるタイプのガスライターで、フリントを収めるチューブと、ノズルをコックするリフトアームが構成するアンティークないでたちが特徴です。この現代のライターとは異なった「いかにも」な外見が、「ちょっと違ったモノ好き」なパイプスモーカー達の心をくすぐるのではないか、と僕は想像しています。

しかし最高の使い勝手を誇るパイプ用ガスライターは、これらのうちどれでもありません。

イム・コロナ パイプマギー

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左がゴールド・エリート 右はクローム・エンジンタン 2011年6月ごろから使用

<オールドボーイ>のメーカーであるイム・コロナより、ひっそりと発売されているパイプライターに、<パイプ・マギー>というモデルがあります。ちょっと古臭い、昭和の匂いがするエンクロージャタイプのガスライター。一見何の変哲もないローレット着火式のライターですが、一説によるとこのモデルがイム・コロナで最も古いパイプ専用モデルだということです。一見アンティーク調なオールド・ボーイより古いとは意外。

外見こそクラシックですがこのライター、非常に優れものです。というか、僕の知る限りこのライターを超えるパイプライターは存在しません。室内での使用に限られますが、ある程度の時間持続した炎で反復して着火をこなすパイプ用ライターとして、優れた美点をいくつも備えているのです。何人か知人にも薦めてみましたが、皆『このライターを知ってしまうともう他のライターを使う気になれない』と口を揃えます。以下その美点を列挙してみましょう。

ボーン・トゥ・ビー・ア・パイプライター

パイプマギーのフレームノズルは90度の角度がついており、パイプへの着火に特化したものです。バルブはリッドと連動しており、炎はリッドを開けている間は持続しますので、一回の着火が長くなってもどこかに力を入れ続ける必要はありません。また、ライター本体の幅が非常に薄く、ノズルは端のほうについているので、炎をパイプのチャンバーに入れる際に目標を誤らず、確実にボウル内に収めることができます。したがってパイプのリムを傷めることもありません。

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横90度に伸びる炎。勿論炎の大きさは調節可能

スリムな外観

パイプマギーのエンクロージャはスリムで薄く、サイズもとてもコンパクト。各エッジは面取りされ、リフトアームライターのフリントチューブのような突起物もないので、ポケットから出す時にも引っかからず、手に痛みを感じさせません。

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ほぼ鉛筆と同じくらいの厚さでポケット内でも邪魔にならず

確実な着火

ローレット(ローラー)の位置は握るとちょうど親指が当たる位置。ローレットは大きく、表面には深い溝が刻まれており、着火時に指が滑らずフリントストライクを確実なものとします。結果、大して力を入れずとも非常に着火率が高く、着火を繰り返すパイプスモーキングにおいてストレスフリー。ローレットが小さいライターにありがちな、<コスリすぎて指が痛くなる>などということもありません。

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無意識にぱっと握ったとき、それがベストな着火ポジションとなる

シュアなアクション

リッドの開閉はパチリ、パチリとクリック感のある小気味よいもの。親指をわずかに起こすだけでオープン。リッドを支える人差し指に力を込めるだけでクローズ。カカリのよいローレットと併せて、極めて小さい動作で着火が終了します。リフトアームタイプのライターのような大がかりな指の動作は必要ありません。ライターをファンブルする可能性も大幅に低減。

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この状態でわずかに人差し指に力を込めるだけで、リッドはパチンと閉まる

…と、美点をいくら挙げても尽きないほどの素晴らしい、まさにパイプに着火するために生まれてきた、強烈な実用性を持ったライターなのですが、何故かこのパイプマギーは輸出専門モデルに設定されており、国内の喫煙具店では手に入りません。入手するには海外通販するしかなく、またかなりの品薄状態のようです。このような優れた製品が、生産国である日本のパイプスモーカーに知られていないのは返す返すも残念です。できればフカシロさんには国内でも販売してもらいたい!日本のパイプライターはこんなにスゲェんだぞ!と海外のスモーカーに胸を張りたい!…もし海外通販に抵抗がなく、良いパイプライターをお探しの方がいらっしゃったらこのパイプマギーは非常にオススメです。フィニッシュはクロームメッキと金メッキがあり、カービングにも何種類かバリエーションがあります。金メッキは表面が柔らかく、早くアジが出てくる一方、クロームメッキは傷がつきにくくタフで、いつまでも光沢が持続します。(個人的にはシルバープレート=銀メッキのモデルが欲しい!)

海外のパイプスモーカーによるパイプマギーのレビュー動画。その軽快な動作がよくわかります

/人◕ ‿‿ ◕人\< 僕と契約して、君もまぎぃ使いになってよ!

(※)注意! 外見が非常に良く似たイム・コロナのパイプライターに、CN-1200というモデル(海外での名前はim corona Roller lighter)がありますが、このライターはパイプマギーとは別物です。使い勝手も遠くマギーに及びません。お間違えの無いよう。

追伸:海外ではこのあたりに在庫があるかも。

なお、価格は海外ショップで80~120ドル程度(フィニッシュによる)です。

追伸2:マギーの感想が掲載されているブログ

いや、煙草とわしのメモです。
rattlesnake_com さん
http://cigarpipes.exblog.jp/17637702

PONKOTSU
きむぞうさん
http://ameblo.jp/kimuzo777/entry-11528660910.html

パイプ喫煙が好き
天邪鬼さん
http://blog.livedoor.jp/tak206/archives/51824286.html

続・よいパイプとは何か

6月 11th, 2013

前回の記事(「よいパイプとは何か」)は<よいパイプとはコントロール性の良いパイプのことである>と結論しながら、ではそのコントロール性の良いパイプとは何かということに触れておらず、読者の方々にストレスを感じさせる内容でした。今回はよいパイプの具体的な要件について考えてみたいと思います。

「煙のカタチ」

本題に入る前に前提として、「煙のカタチ」の話を少し。シガーを吸われる方なら誰もが一度はやったことがあるはずだと思います。《葉巻の吸いさしをパイプに差して吸う・もしくは葉巻の葉を細かく解してパイプで吸う》というやつ。期待通りの味になりましたか? 多分ほとんど全ての人が『こんなの全然葉巻の味じゃない!』と、パイプで葉巻を吸うことの無意味さを悟ったと思います(葉巻がああいった形で、ああいった方法で吸われる理由ですね)。不思議なもので同じものを燃やしているはずなのに全く味が違う。これはシガーの吸い口から直接口内に入ってくる煙と、パイプの中を通って口に届く煙のカタチが異なるからです。同じ葉巻の煙が、パイプのボウルを通りボウルボトムで90度曲がり、煙道を通りステムを通りリップスロットで平らな形になるうちに、すっかり別の味に変化してしまう。煙草の煙とは僕らが考えている以上に繊細なもので、その流体?としてのカタチが変化させられると味まで変わってしまうらしいのです。同じことは例えばシガレットに空気撹乱型のヤニ取りホルダーをつけた時にも言えます。つまり煙草の煙を最も良く、ありのまま味わうためには、できる限りこの「煙のカタチ」に影響を与えないようにしてスモーカーの口に届ける必要があるのです。

エアフローの概念

このときに重要になってくるのが「エアフロー理論」という概念です。この概念は「In Search of Pipe Dreams」の著者であるリック・ニューカム氏がいまから10年ほど前に提唱したもので、アメリカのパイプコレクター団体NASPCの機関紙である「Pipe Collector」誌に掲載されたケン・キャンベル氏の記事よって広まったものです。要約すると美味いパイプには共通点があり、そのキーとなっているのは滑らかなエアフロー(空気の通りかた)である、というものです。つまり前述した「煙のカタチ」に影響を及ぼさない空気の通り方、これが良いエアフローであるというわけです。(現在ではエアフロー理論を重視することは北米のパイプ作家たちの間でほぼ必須となっており、この理論に忠実にパイプを製作していることを売りにしている作家も数多く存在しています。)

良好なエアフローを実現するには、いくつかのポイントがあります。

1 煙道の太さ

ボウルからシャンクを通る煙道の太さ。この直径が太ければ太いほど煙はスムースに流れます。あまりに太いと煙草の葉が煙道内に入ってしまうので、上限はあります。大体3.5mmから4.5mmぐらいがエアフローを保障しつつ実用的な煙道径だと考えられています。

2 リップスロットの容量

リップスロット(マウスピースの終端部で、平らに切られている煙道の出口)も非常に重要です。どんなに煙道径が太いパイプでも、この終端部の出来が悪いと良いエアフローは実現できません。リップスロットはできるだけ深く、V字状になってマウスピースの奥に向かって切り込まれ、滑らかに煙道と接続している必要があり、その空間の厚みも上下に大きければより有利になります。マウスピースのビット部分(歯でバイトする部分)の薄さを確保しながらVスロットの容量を広げるのは脳外科手術にも似たスキルを要求するもので、パイプメーカーにとって非常に手間と時間が必要とされる作業になっています。十分に広く深いVスロットは、太い煙道から流れ出る煙を阻害せず、また口中に柔らかに煙を広げる機能もあります。パイプ全体の長さから言えばほんの1インチ程度の部分ですが、エアフローの良し悪しを最終的に決定付ける部分です。

マイケル・リンドナーのリップスロット

マイケル・リンドナー(米)作のパイプのリップスロット。開口部の巨大さが目を惹くが、その深さはなんと1インチにも達する。

3 スムーズな流体移動

シャンク内に大きな突起やズレがあれば、良いエアフローの障害となるばかりか、結露が生じてガーグリング(水滴がゴボゴボと音を立てる不快な現象)を起こしたり、汚れが蓄積されたりして問題すら生じます。ジャンクション(シャンクとステムの接合部)内部には、できるだけギャップが少なく、煙が衝突する突起などがないことが理想的です。このためにパイプ作家は、モーティス(いわゆるダボ穴)の底にテノン(いわゆるダボ)とのギャップ(テノンギャップ)ができないように注意したり、テノン開口部にベベル(面取り)を施したり、パイプ内煙道とシャンク内煙道が同一軸上にアサインされること(煙道アラインメント)に注意を払ったりしています。

ベベルされたテノン

ベベル(面取り)されたテノンの一例。煙が滑らかにテノン内に進入できるようになっている。ブライアン・ルーセンバーグ(米)。

このエアフロー理論に忠実に製作されたパイプが必ずしも<美味いパイプ>になるとは限りませんが、少なくとも<快適なパイプ>にはなります。エアフローの良さはそのまま前回の記事で触れたコントロール性に繋がるのです。エアフローに優れたパイプは喫煙中のインフォメーションをスモーカーに忠実に伝達するため、初心者でも使いやすく、また喫煙技術の上達を助けます。ベテランにとってもストレスがなく使うのが楽しいパイプになることは間違いありません。

よいパイプとは何か

6月 9th, 2013

よいパイプとは何か。これはパイプスモーカーを酷く悩ませる命題です。

高価なパイプ?グレインが良いパイプ?これは多くの人が安いグレインが悪いパイプでも美味しいパイプに当たったことがあるでしょうから、単なるお金持ちの自慢だと考えてよさそうです。ロングシャンクのパイプ?ベントしたパイプ?もしそうならこれらのシェイプが大半になっているんじゃないかな。ビンテージパイプ・コレクターとしての僕の口からは<ブライヤーの質>だの<キュアリング>だのという言葉が出てくることを期待している人もいるかもしれないけれどここではその辺りに触れることはやめておきましょう。

僕の経験と信念では、良いパイプとは『コントロールしやすいパイプ』ということになっています。

コントロールの良さ。これはボウルの大きさから煙道の太さ、リップ内スロットの形状など色々な要素が複雑に混じりあって生まれるものですから、一概にこれこれこういうパイプが良いパイプだ、とは言いにくいのですが、コントロールのしやすさは良いパイプの第一条件です。どんなに味が美味いパイプでも、あまりに使いにくいものはローテーションから外れていってしまうのを経験した方も多いはず。

コントロールが良いパイプとは、思うままに煙を操れる、操作性が良いパイプのことです。こういったパイプは初心者でも簡単に扱えるし、ベテランならストレスを感じることなくそれこそ官能を感じるほどの<煙を操る>感覚を味わえます。勿論上手く吸えることにも繋がるわけで、煙草も美味しく吸えるわけです。

逆に、コントロールが悪いパイプを使っていると、喫煙技術は向上しません。初心者にはパイプのせいで自分の喫煙法のどこが悪いのか、原因を特定することが困難になるからです。ベテランといえども、使いにくいパイプをわざわざ使いこなすのは、遊びとしては面白いでしょうが普段の喫煙としてはストレスが溜まります。

特に初心者は、コントロールの良さから得られる恩恵は非常に大きいです。コントロールの良いパイプを使いましょう。